『ゲンロン0』第1回読書会レジュメ（第3章、第4章）

1. 『ゲンロン0』第1回読書会
レジュメ
（第3章、第4章）
@tokada
2017/7/16

2. 第3章 二層構造
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3. 第3章の論旨
ナショナリズムの時代が終わってグローバリズムの時代が来たのか？
否、身体的にはグローバルで、精神的にはナショナルであることが両立する
「二層構造」の時代になったのだ。
ネグリ＆ハートの「マルチチュード」の概念は二層構造の時代における政治理論
として可能性があるが、「連帯の不可能性によって連帯する」という否定神学を
抱えてしまっている欠点がある。
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4. ナショナリズムの時代の世界観 (p.116-)
世界市民
国民
市民
家族
人間
成熟
単線的な成熟のイメージ
上半身（公）
＝国民の合理的な思考
（他国に見せる）
下半身（私）
＝市民社会に渦巻く非合理な欲望
（抑えこむ）
ネーションをふたつの半身の統合として捉える
統合
カント「国家は人格」、ヘーゲル「国家は市民社会の自己意識」
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5. 二層構造の時代 (p.124-)
上半身 精神 思考 意識 政治 国家 規律 人間 人格 愛
ナショ
ナリズ
ム
下半身 身体 欲望 無意識 経済
市民
社会
管理 動物 生命
肉体
関係
グロー
バリズ
ム
人間の層
動物の層
上半身と下半身が統合されることなく、それぞれ異なった秩序をつくりあげてしまっている
分裂
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6. リベラリズムが直面している思想的な困難 (p.128-)
統合
ナショナリズムの時代 二層構造の時代
普遍的な正義を信じる
Liberalism Communitarianism
Libertarianism
共同体の善しかない
動物の快楽しかない 分裂
Localization
Globalization
Nation
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7. （参考）「ポストモダン 情報社会の二層構造」図（Source: 2005年 GLOCOM 東浩紀執筆記事）
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/journal_archive/2005/09/9.html
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8. よくあるリベラリズム側からの誤解
ようやく『ゲンロン0』読了。傑作だと思う。相当野心的な論を展開しているにも関わらず先行研究への
深い理解や洞察を示した上でそれらをBrexitやトランプ大統領誕生など現実の現象に接続する補助線を豊
富に入れ込んでいるため大変読みやすい。
津田大介 @tsuda
俺っぽいことを言うと、あずまんは『ツイッター創業物語』読むといいと思う。ツイッターの創業者エヴ
ァン・ウィリアムズとジャック・ドーシーの泥々権力闘争を裏側から描いている本で彼らの対立構造は
『ゲンロン0』の二層構造に近いと思った。
津田大介 @tsuda
というのも、エヴァンはツイッターの本質を「人々がどこで何をしているのか共有する手段（人間／グロ
ーバリズム的）」とみなし、ジャックはツイッターを「自分と自分のエゴを見せつける場所（動物／ナシ
ョナリズム的）」とみなしていたから。両者は経営方針で意見対立し、お互いを追い出した。
津田大介 @tsuda
Source: 津田大介さんによる『ゲンロン０ 観光客の哲学』東浩紀についてのつぶやき（20170601） - Togetterまとめ
https://togetter.com/li/1115863
2017-06-01 00:05:56
2017-06-01 00:08:10
2017-06-01 00:08:58
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9. というのも、エヴァンはツイッターの本質を
「人々がどこで何をしているのか共有する手
段（人間／グローバリズム的）」とみなし、
ジャックはツイッターを「自分と自分のエゴ
を見せつける場所（動物／ナショナリズム
的）」とみなしていたから。両者は経営方針
で意見対立し、お互いを追い出した。
おわかりいただけただろうか
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10. マルチチュード (p.133-)
国民国家の体制
帝国の体制
ナショナリズムの層がつくりだす政治
＝規律訓練の権力、命令による統治
グローバリズムの層がつくりだす政治
＝生権力、管理による統治
分裂
移行
統治体制の変化 運動の変化
移行モデルではなく共存モデル
とすべきではないか？
『ゲンロン0』
の立論
プロレタリアート
マルチチュード
私的な生を起点とする公共の政治
（生政治の自己組織化）
公的な領域の政治（アーレント）
中身は関係なく連帯するしかない、
だけでは否定神学的ではないか？ 10

11. 第4章 郵便的マルチチュードへ
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12. 第4章の論旨
「否定」ではなく「誤配」からはじまる「郵便的マルチチュード」の概念こそが、
観光客の哲学である。
誤配の力学には複雑ネットワークの理論が使える。つまり、優先的選択がつくり
だしたグローバルな帝国の体制（スケールフリーの秩序）にあっても、誤配によ
るつなぎかえが近道（スモールワールドの秩序）をつくってくれる。
戦略的に再誤配を企てることが、現実的な連帯の基礎となるものであり、観光客
の原理である。
ローティの「共感」やルソーの「憐れみ」の概念はそのためのヒントになる。
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13. 観光客 (p.155-)
旅人
＝否定神学的マルチチュード
観光客
＝郵便的マルチチュード
否定神学
誤配
連帯が存在しないからこそ
「連帯しようとする」逆説
連帯が存在しないからこそ
「連帯しているかのように
見えてしまう」逆説
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14. 観光客が起こす「誤配」の例 (p.158)
● 美術にまったく興味がないひとも、フランスやイタリアに行けば美術館めぐ
りをしてみたりする
● 1900年のパリ万博に合わせ発行されたイギリス人向け観光ガイドに、訪問先
として下水道や死体置き場、屠殺場などが紹介されている（マキャーネル）
他にも思いつく例や実体験があったら挙げてみましょう
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15. 誤配の数学的なモデル (p.161-)
「インターネットの地図」を可視化した事例
https://en.wikipedia.org/wiki/Opte_Project
スケールフリー・ネットワーク
＝優先的選択成長による不平等の秩序
スモールワールド・ネットワーク
＝ランダムなつなぎかえによる誤配の秩序
ふたつの
秩序が
両立する
富の量
（クラスタ
係数＝ハブの
大きさ）
人々の数
（ノードの分布）
優先的選択成長
ランダムな
つなぎかえ
べき乗分布
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16. 観光客の原理はいかにして可能か (p.192-)
リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』における「共感」
リベラル・アイロニストは、公的なものと私的なものの分裂を受け入れる
連帯は「細部」への「感情移入（共感）」によって可能とされる
（例：たまたま目の前に苦しんでいる人間がいると、どうしようもなく
「苦しいですか？」と呼びかける）
⇒本書が「誤配」という言葉で名指したものの可能性に近かったのではないか？
ルソー『人間不平等起源論』における「憐れみ」
「苦しんでいる人々を見て、よく考えもしないでわれわれを助けに向かわせる」
「各個人において自己愛の活動を和らげ、種全体の相互保存に強力している」働きのこと
⇒「誤配」「つなぎかえ」に似ている 16