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2012 年度   ゼミ論文

「“原発”という問題解決手段を捨てた日本社会は構築されるのか」



      専門演習(B1)エンノ・ベルントゼミ


          経営学部      経営学科


             山崎     翔平




                -1-
「“原発”という問題解決手段を捨てた日本社会は構築されるのか」



                           目次
はじめに


第一章 なぜ原発なのか ―港での出逢い―
1-1 テーマ設定に至る経緯
1-2-1 原子力発電について       -原子力発電所の稼働状況-
1-2-2 原子力発電について       -発電コスト-
1-3 研究の視点
1-4 研究の意義


第二章 研究方法~シナリオプランニングの適用~          ―出航の準備―
2-1 シナリオプランニングとは?
2-2 シナリオプランニング適用の意義
2-3 シナリオ作成方法


第三章 シナリオプランニングの実践         ―いざ、大海原へ―
3-1 テーマ設定と 5W1H
3-2 関係図と問題の所在
3-3 影響要素の確定とその詳細
3-4 CIM の集計と SG の作成
3-5 軸の選定と FFM の作成


第四章 各世界の考察 -待ち受ける三つの世界と冒険―
4-1 世界 A 「原発なき日本に未来なし」とその道のり
4-2 世界 B 「ここ(日本)は私たちの帰る場所」とその道のり
4-3 世界 C 「ハンガーゲーム」とその道のり


第五章 日本で生活し、生活しようとしている人々へ         -三つの冒険から得た教訓―
5-1 未来を生きていく人々への教え
5-2 私たちの故郷を失わないために -これから社会に出る学生へ-


おわりに




                           -2-
はじめに


 本稿では「“原発”という問題解決手段を捨てた日本社会は構築されるのか」というタイ
トルのもと、日本の未来における「原子力発電の有無」について考察する。このようなタ
イトルをつけたのは、原子力発電は電力供給の問題だけではなく、雇用や自治体の財政の
問題についても影響を及ぼしており、筆者の目には原子力発電が日本の諸問題に対する、
一時的な解決手段のように映ったからである。
 本稿では「原子力発電所の有無」について、より多面的に考察するためにシナリオプラ
ンニングという手法を用いた。これが本稿の特徴である。本稿の構成としてまず、第一章
で本テーマに至った経緯と現在の原子力発電について記す。次に第二章で、今回の研究に
適用するシナリオプランニングという手法について触れ、第三章と第四章でシナリオプラ
ンニングの作成手順に従って研究成果を記していく。そして最後に第五章で本研究を通し
て得た知見を元に筆者の考えを記す。それでは、読者の方たちをシナリオの世界へ招待し
よう。


第一章 なぜ原発なのか ―港での出逢い―


1-1 テーマ設定に至る経緯


 2011 年、3 月 11 日の 14 時 46 分に世界を震撼させた東北地方太平洋沖地震が発生した。
東北地方は大津波に襲われ、多くの死傷者が出た。それだけではなく、福島第一原子力発
電所にてチェルノブイリに匹敵する規模の原子力発電所事故が発生した。世界は騒然とな
った。世界も日本のメディアもしばらくの間、原子力発電所の事故と震災のニュースで持
ちきりだった。
 しかし、二、三カ月ほど経過した頃からメディアで報道される機会が減ったように感じ
た。そして人々の原子力発電所と震災への興味と関心が次第に薄れているように感じ、違
和感を覚えた。なぜ、自国で発生した史上最大規模の問題に対して国民はこれほどまでに
楽観的なのだ、と。
 そこで日本国に住む人間として、今後、関わっていかなくてはならない原子力発電の問
題について研究して、後世に語り継いでいけるような大人になりたいと考え、研究テーマ
を「原子力発電所」について設定したのである。


1-2-1 原子力発電について-原子力発電所の稼働状況-


 現在、日本の原子力発電所は全て合わせて 54 基存在している。その中で稼働しているも
のは福井県にある大飯原発のみであり、その他の原子力発電所は稼働を停止している。最


                        -3-
近では、原子力規制委員会と九電力会社が主導で原子力発電所付近の活断層を調査し、原
子力発電所の安全性について議論を重ねており、再稼働には慎重な姿勢を示している。
    しかし、新たに発足した自民党安倍内閣のもと、安倍首相は原子力発電所の新たな建設
を明言している。1


1-2-2 原子力発電について     -発電コスト-


    昨今、原子力発電の問題が取り上げられるなかで、政府が原子力発電を擁護する理由と
して「原発のコストは安い」という論理が頻繁に用いられる。本節では読者の原子力発電
のコストに対する先入観を払拭するために、一般的によく知られているこの論理の真偽を
検証しておく。
    下記のグラフは経済産業省が発表した各発電方法におけるコストの試算である。




               出所 経済産業省「平成21年度 エネルギーに関する年次報告書」




    上記のグラフでは原子力のコストが 5~6 円と最も安価な発電方法となっている。
                                          しかし、
これは原子力発電にかかるコストの一部しか試算していないと、立命館大学の大島は言う。
そこで大島は実際に原子力発電にかかる全てのコストを試算した。以下、その結果を記す。
    まず、原子力発電にかかるコストは下記の三種類に大別される。


<原子力発電のコストの試算範囲>
① 電気事業に直接要するコスト
② 政策コスト
③ 環境コスト



1   2013 年 1 月 1 日 「読売新聞」朝刊 第一面


                            -4-
政府試算ではこれらのうち①の発電事業に直接要するコスト、つまり電力会社にとって
の私的コストのみを試算している。そのため発電コストが安く見積もられているのである。
 ②の政策コストとは原子力発電の技術開発コストと立地対策コストである。実際に支払
われている立地対策コストを示したが下記のグラフである。


  原子力発電所に関する固定資産税収入と電源立地促進対策交付金(立地対策コスト)




                             原発一基あたり40年間で
                             総額約1000億の交付金




出所:全国原子力発電所所在市町村協議会 http://www.zengenkyo.org/ayumi/koufukin.html


 原子力発電所の減価償却期間である 40 年間で一基あたり約 1000 億円、日本にある 54 基
の原子力発電所が 40 年間償却されたと仮定すると約 5 兆 4000 億円が立地対策コストとし
て支払われることになる。これら①と②のコストを合計した原子力発電の発電コストを表
したものが下記の図である。

                                           1970~2010年平均
                                          単位:円/kwh
             発電に直接    政策コスト
                              合計
             要するコスト 技術開発 立地対策

    原子力          8.53          1.46       0.26      10.25

     火力          9.87          0.01       0.03      9.91

     水力          7.09          0.08       0.02      7.91


                    大島堅一著 原発のコスト 岩波書店(2011)より筆者作成




 図より原発の発電コストは火力発電と水力発電よりも高価になっていることが分かる。


                                -5-
さらに原発の発電コストには③の環境コストも含まれる。環境コストとは損害賠償費用、
事故収束費用、現状回復費用、廃炉費用、行政費用などである。なかでも原子力発電に伴
って生産される放射性廃棄物の管理と再処理などのバックエンド事業にかかる費用を推計
すると 18 兆 8000 億円のコストがかかる。福島の原子力発電所の事故後の事故収束費用、
損害賠償費用も含めると、原子力発電のさらなるコスト高が容易に想像できる。
 これらのことから「原発のコストは安い」という論理は誤りであることが分かる。


1-3 研究の視点


 本研究は、電力の需給構造・市民と国家の関係という二つの視点から考察している。
 電力の需給構造を一つの視点として採用した理由は、日本における原子力の利用方法に
ある。そもそも原子力発電という発電方法は、1953 年にニューヨークで行われた国連の演
説で、当時のアメリカ大統領であったアイゼンハワーが核の平和利用を訴えたことに端を
発している。この演説で、それまで核兵器としての利用が一般的だった原子力の利用方法
に、発電という利用方法が追加されたのである。戦後、非核三原則を唱えた日本が、今日
まで原子力を電源として利用することができた理由の多くはここにある。
 これらのことから日本における原子力の利用方法は発電、つまり電力の供給のみに限定
されていることが分かる。よって本稿の考察の対象である、未来の「原子力発電の有無」
を決定づける要因として電力の需給構造を一つの視点として取り上げることは適当である
と考えられる。
 一方、市民と国家の関係をもう一つの視点として取り入れた理由は、電力と市民の生活
は密接に関わっているという点にある。現在、日本に在住するほとんどの市民は電気エネ
ルギーなしでは生活することができない。よって電力の問題は市民の生活に直接的に影響
が及ぶため、国家は国民への生活保障という観点から、この問題を無視することができな
いのである。
 例えば、原子力発電所の廃止による電気料金の変化により、国民、特に低所得者層や貧
困層の生活に支障をきたしてしまうことは国家の社会保障責任となり、市民はその被害を
直接的に受ける。これらのことから、市民と国家の関係を軽視して、「原子力発電の有無」
について議論を進めることは、国家の社会保障責任と市民の生活への影響を無視すること
になる。このような一面的な視点からの考察は危険であり、説得力に欠ける。よって、市
民と国家の関係を一つの視点として取り上げることは適当であると考えられる。


1-4 研究の意義


 本研究の意義は大きく分けて二つある。一つは原子力発電所の問題だけでなく、日本の
未来の生活・社会環境を多角的な視点から、一貫性を持った物語として描くことができる


                      -6-
点にある。それによって原子力発電所が新たに建設、または稼働される可能性がある自治
体の市民や今後、日本で仕事をする、もしくは日本への移住を考えている人々にとっても
本研究は彼らの人生設計において有益な情報を提供する素材になると考えられる。
 また本研究は日本国の市民はもちろんであるが、原子力発電の問題と向き合い、市民に
快適な生活・サービスを提供する使命を持つ自治体に対しても、重要な示唆を与えると考
えられる。さらに企業経営にとって必須の電力の需給構造・市民と国家の関係の変遷を俯
瞰的に読み取ることで、未来の企業経営における存続のポイント・変革の兆しを読みとる
ことも可能となる。
 二つ目は先行研究にはなかった独自のアプローチをしていることである。先行研究では
主に電力の需給構造のみからアプローチしているものが多く、一面的な見方に偏る傾向が
ある。しかし、本研究ではシナリオプランニングという手法を用いることで、複数の視点
を複合的に組み合わせて、より多面的に考察することを可能にした。
 また市民と国家の関係という視点を採用したことで、より市民に近い立場で、ストーリ
ー立てて原子力発電の問題を論じているという点で、本研究は先行研究にはない、独特な
視点を持っている。これらのことから、本研究は原子力発電関連の先行研究に刺激的な一
石を投じる役割を果たしている。


 それではシナリオという大海原へ旅立つ準備をしよう。


第二章 研究方法~シナリオプランニングの適用~    ―出航の準備―


2-1 シナリオプランニングとは?


 シナリオプランニングとは欧米企業で一般的に用いられている企業経営における戦略策
定手法の一つである。 その定義としては「未来のビジネス環境がどうなるのかを物語の形
で体系的に表したもの 」2「問題解決の求められる状況を取りまく環境を描写するストーリ
ー 」3などと言われている。
 文献によってその定義に多少の違いはあるが、それぞれに共通しているのは 「ストーリ
ー性を持った未来を描く」ということである。ストーリー性とは 「因果関係の積み重ね」
である。ある事象が起こる背景には必ず何らかの原因が存在する。 シナリオプランニング
では一つ一つの事象の因果関係を突き詰め、それらを上手く整合させて未来を描くことで、
未来にストーリー性を持たせる。 このようにしてシナリオプランニングでは未来を描くの


2シナリオ・プランニング   戦略的思考と意志決定」 ダイヤモンド社 (1998)
3「問題可決のセオリー   論理的思考・分析からシナリオプランニングまで」日本経済新聞
社 (2006)


                     -7-
である。
 シナリオプランニングは一種の未来予測と誤解されがちだが、予測とは考え方が根本的
に異なっている。下記の図はその違いを簡潔に表したものである。




2-2 シナリオプランニング適用の意義


 シナリオプランニングを研究方法として適用する理由は二つある。一つは描こうとする
未来に幅を持たせることができる点にある。通常の未来予測で描くことのできる世界は一
つである。しかしシナリオプランニングでは最善と最悪を想定した三つの世界を描くこと
ができる。それはシナリオプランニングが最悪の未来に備えることを一つの目的としてい
ることに起因する。
 二つ目はより客観的な視点から考察することができる点にある。通常の未来予測では自
分の興味本位で世界を考えてしまう危険性が極めて高い。しかしシナリオプランニングで
は他者との対話を通じて自身のメンタルモデルを打ち破り、より客観的で説得力のある世
界を構築することが可能になるのである。


2-3 シナリオ作成方法


 シナリオ作成は以下の手順で行われる。第三章以降はこの手順に従って考察を進める。


STEP1 テーマと 5W1H の設定
STEP2 関係図と問題の所在の特定
STEP3 影響要素の確定とその分析
STEP4 CIM の集計と SG の作成
STEP5 軸の選定と FFM の作成
STEP6 スパイダーチャートと各世界の作成
STEP7 インプリケーション


 それではいざ、大海原へ旅立とう。


                        -8-
第三章 シナリオプランニングの実践       ―いざ、大海原へ―


3-1 テーマ設定と 5W1H


 シナリオを描く際、考察する対象とその範囲を明確にするために、いつの時代、どの場
所において、誰の視点で、何を、なぜ、どのような方法を用いて世界を描くのか、という
5W1H を設定する。


 テーマ “原発”という問題解決手段を捨てた日本社会は構築されるのか
 When 2030 年
 Where 日本
 Who 日本で働いて生活し、生活しようとする人々
 What   電力需給・市民と国家の関係
 Why 原発に危険を感じているから
 How シナリオプランニング


3-2 関係図と問題の所在の特定


 5W1Hを設定した後、当該テーマと What を取り巻く環境を俯瞰的に見るためにシナリオ
を描いていく上での地図となる関係図を描く。以下で示す図は、関係図とその環境(地図)
に潜む障害(問題の所在)を端的に表している。

  基本のMacroモデル
            電力需給の
             関係図
                        中央

                        地方




               企業              個人

                                       9




                         -9-
脱原発への一つのモデル

                           脱原発
短期


                     ①節電      ②火力で代替
中長期



      ③電力消費の         ④再生可能エネルギー導入         ⑤全分野での
       少ない社会                               石油削減




                           放射能も
                           温暖化も
     雇用とビジネスの発生                          国民所得流出の防止
                           ない未来へ

                           脱原発の市民戦略(2011) 緑風出版 第7項 引用




関係図~Macro~                   政府         原発運営と引換えの独占権付与
                                        庇護的な政策
                税金
                                  政治献金
                                  国会内部コントロール
      Demands                                  Suppliers
     市民(消費者)               高額な電気料金             九電力会社
    低圧需要家
                       電力供給による生活のあおり            地域独占
     一般家庭
 (最終消費電力増加傾向)                              発電     送電   配電
                                               発送配電一貫体制
      特別高圧需要家
       高圧需要家                   00       送電線独占で      法外な
         企業
                            卸売電力市場
                                        競争ブロック      託送コスト
     (小売自由化済み)
      自家発電量増加                                  非競争関係
                                                IPP・PPS
      原則:SuppliersはDemandsの需要量に応じて電力を供給している
         政府の核技術保有には大きな電力需要が必要
      現状:需要量増加→供給量増加(電力需要増に対する電力の安定供給という議論の発生)
      需給関係における不確実性
      Demandsは自家発電などによって電力消費量を削減したりSupplierになることが可能。
      →DemandsとSupplierの力関係が逆転する可能性あり。




                              - 10 -
関係図~Demands~                 エネルギーと市民の距離(現状)

                                                            生活
                            エネルギー利用機器

再生可能エネルギー                                           光
                                                             産業
                    電気
                                                    熱
 火力エネルギー
                                                             運輸
                     熱
原子力エネルギー                                              運動

                                                             民生
                                                      情報
 水力エネルギー

    ・
    ・
    ・      需要サイド中心の系統運用
                            エネルギーの過剰消費

         エネルギーと市民社会(生活)との分離
           地産地消のエネルギー : EIMY : energy in my yard / 新妻弘明著 より筆者編集




関係図~Demands~                エネルギーと市民の距離(自給社会)

 エネルギーは消費するのみ

                            連携
                 自治体                   企業
                          アプローチ
                 関心低い                  関心低い
付加価値
                                                           生活の豊かさ
                         流通エネルギー              市民生活
            達成感
  波及効果                   自給エネルギー                楽しみ



             食           多様な関係性          コミュニティ
                         地産地消の自覚


           喜び
                         自然生態系                心身の健康

                           自然との共生
                                                              雇用
 地域価値
           エネルギーと市民社会(生活)は密着
           地産地消のエネルギー : EIMY : energy in my yard / 新妻弘明著 より筆者編集




                              - 11 -
関係図~Supplier~               電力会社のビジネスモデル

福島原発事故によって             電気事業者             地域独占状態の主原因
原子力発電への批判の高まり
                        九電力会社

            発電           送電               配電

      ・火力と原子力が主        ・中央給電指令室に        ・電気料金は
      ・発電者の割合           よる系統運用          総括原価方式で
                                        高額料金
                       ・送電線を独占保有        (一般家庭で
      自家発電    250Tw
                       ・託送コストで          20~25円/kwh)
      PPS   20Tw        新規参入障壁を高くする
      IPP                                 報酬率
            100Tw
      九電力会社                              必要経費
      800~900Tw                         (電源開発
                                        促進税含む)
                      発送配電一貫体制

             IPPやPPSとの競争関係が発生せず




基本のMacroモデル
                             市民と国家の関係の
                                関係図
                       中央
                                   地方分権の問題
                       地方          (権限・地方財政)


                                           不安定な
                                           市民の力

            企業                     個人

                                                      20




                          - 12 -
関係図~市民の力~                       市民活動団体の機能不全
                                                     個人

       国家                                          市民活動団体
                                                   (NPOなど)
                     弱い影響力                               参加せず

                                                        市民
      地方政府
                                                        家族

      財政赤字                                    疲弊
                                                   金銭的援助 疲弊
                         社会保障
                                              労働者        主婦(夫)
      中央政府                税金                   家族の面倒
                                                    金銭的援助        金銭的援助
                                                 頼る     頼る

                                                    親        子ども




                                                         教育の必要性
少子高齢化による社会保障問題の顕在化                                       サービス    多大な金



                                                             教育機関




社会保障と経済の関係図(概念図)
                                    不安定な社会保障給付
                                                        経済活動
     財源              社会保障                               国民経済
                                給付                       家計
                    年金        (所得保障
     租税       負担    医療        社会サービス)
     保険料            介護・福祉                            現金給付
     利用料            公的扶助                             サービス給付
                    労働(雇用・労災)


 税                       運     購    供               消 労 給 貯
                         用     入    給               費 働 与 蓄
     行政(国・地方)                           企業・団体

                                             ヒト・モノ・カネ
     税・国債・その他
                                            (財貨・サービス)

                    租税
      租税


                                        非労働者の増加
             社会保障と日本経済 : 「社会市場」の理論と実証 / 京極髙宣著(2007)より 編集




                                   - 13 -
関係図~市民の力~

       企業                                          個人

                            金
                                                   消費者
       大企業                サービス

                                                   労働者
     隷属    仕事(金)
                                                   疲弊
                          仕事(不安定)
                                                  正規労働者
      中小企業                 労働力

                           仕事(超不安定)
                                                    賃金格差
                                                    不公平
  監視機能緩和   ポスト、金      重労働


                    守らず                           非正規労働者
      労働組合                                         超疲弊
                    参加せず
       形骸化



                                                           賃金格差
 労働組合の形骸化           過剰な労働時間




関係図~地方分権~
                                                    ・補助金への依存体質
                           国家                       ・中央と地方における
                                                    歳入歳出比率の逆転
                          中央・省庁
                    補助金による
                    財政統制            交付金獲得の
                                    ためのLobbying
必要以上の               経済政策の
                    押し付け
行政への関与
                      普通公共団体

           交付税措置つきの 非効率な             税金     政府保証による
           地方債発行    行政サービス                  格付けの形骸化



                   投資家     市民
                   金融機関                  格付け機関



                                           形だけの債権市場




                                - 14 -
3-3 影響要素の確定とその分析


 関係図を作成し,そこに潜む問題の所在を明らかにした後、その中から世界を描く上での
ドライバーとして影響要素を抽出する。そして、各影響要素について詳細な分析を行い、
未来における仮説を三つ立て、当該テーマの現状と未来を俯瞰的に認識する。以下は関係
図から抽出した影響要素の一覧とその詳細な分析の結果である。




  影響要素一覧
  ①スマートグリッドは構築されるのか
  ②共有型の消費スタイルは浸透するのか
  ③脱クルマ社会への取り組みは進むのか
  ④地域住民・市民はエネルギーを地産地消するのか
  ⑤再生可能エネルギーは普及するのか
  ⑥火力発電の燃料資源として天然ガスは
   安定的に確保することができるのか
  ⑦発送電分離は進むのか
  ⑧キャリア教育は整備されるのか
  ⑨市民は行政の担い手となりうるのか
  ⑩ベーシックインカムは導入されるのか
  ⑪公的年金制度は整備されるのか
  ⑫生活保護に依存する人々は増加するのか
  ⑬就労支援事業は活発化するのか
  ⑭労働組合は機能するのか
  ⑮労働時間は短縮されるのか
  ⑯同一価値同一労働は実現するのか
  ⑰地方税制度は整備されるのか
  ⑱行政サービスにおける地方の権限は拡大するのか
  ⑲地方債市場は整備されるのか


                                   35




                       - 15 -
① スマートグリッドは構築されるのか


定義:スマートグリッドの普及による需要者・供給者の双方向的な効率的系統運用の可能
性を考察する。
<Model>




 現状:スマートグリッドとは「電力利用の効率化を実現するために情報通信技術を利用
して効率的に需給バランスをとり、生活の快適さと電力の安定供給を実現する電力送配電
網」と定義されている(2010 年度エネルギー白書)
                         。その本質は需要者と供給者の両者の需
給調整によって効率的な系統運用を行うことである。具体的には①送配電系統の監視・制
御技術②需要側のエネルギーマネジメント③系統の効果的運用が可能となる先進技術④先
進的なインターフェイス技術がある。これは例えばスマートメーターと呼ばれる機器を用
いることで、各家庭における電力消費量を、電力供給者と需要者がリアルタイムで把握す
ることができるので、電力消費量を削減するインセンティブとなる。
 スマートグリッドには再生可能エネルギーの大量導入という狙いもある。スマートグリ
ッドの技術を用いれば、出力が不安定な再生可能エネルギーの導入に伴う系統運用の困難
性を排除することができるからである。しかし、日本の電力会社はスマートグリッド導入
に消極的である。それは①日本では豊富な供給設備で今後の需要を賄うことができる。②
日本は再生可能エネルギーがまだ普及していない。③日本の電力システム水準の高さ。す
なわち停電が少ない。④スマートグリッド導入は電力自由化の起爆剤になる可能性がある
ため既存の独占構造の崩壊を九電力会社が避けている、といった理由がある。しかし 2010
年に経産省のもとスマートコミュニティ・アライアンスという標準化などの業界団体が設
立されて横浜市・豊田市・けいはんな学研都市・北九州市の四カ所で実証実験を始めるな
ど積極的な導入活動も見られる。


将来 A:スマートグリッドは順調に普及し日本の新たな電力インフラとして浸透する。
将来 B:スマートグリッドは一部地域で普及するものの従来の送配電システムがまだメイン
で使用される。
将来 C:スマートグリッドは実用化には踏み切れず、従来の送配電システムが使用される。


                     - 16 -
② 共有型の消費スタイルは浸透するのか?


定義:共有型の消費形態の浸透という視点から電力消費量の削減可能性を考察する。
<Model>




              (2011 年度 ベルントゼミ   卒業論文 第 171 項 抜粋)
 現状:三浦(2012)は、我々は現在、第四の消費社会にいると言う。第四の消費社会の
特徴は大きく五つある。①社会貢献も視野に入れた社会志向の消費②モノを共有しようと
するシェア志向③シンプル・カジュアル志向④自国の文化を誇りに思うような日本志向、
地方志向⑤人とのつながりの重視、の五つである。近年、これらのうち②のモノを共有し
ようとするシェア志向という特徴を利用したシェアビジネスが成長の兆しを見せている。
日本では、例えばカーシェアリングなどが挙げられる。世界ではベビー用品などの衣料品
をシェアしたり、物々交換によるモノのシェアを行うこともある。
 シェアという消費形態が浸透することで、製品の全体的な生産量が削減され、結果とし
て生産過程における電力消費・廃棄過程における電力消費量を削減することができ、また
CO₂排出削減効果も期待される。しかし、戦後、製造業中心の発展を遂げ大量生産、大量消
費を繰り返してきた日本の社会構造・産業構造を変えることは容易ではない。なぜならシ
ェア志向が浸透すれば、製品の生産が減少するため、製造業者の利益が減少してしまい、
製品開発・技術開発を行って、高付加価値型の製品を開発しつづけてきた日本の製造業の
ビジネスモデルが崩壊するからである。しかし第四の消費形態が浸透し始めた今日、カー
シェリングなどのシェアビジネスの勃興の機運があることはまぎれもない事実である。


将来 A:人々にシェアという消費形態が浸透し、電力消費量は削減される。
将来 B:人々はシェアという消費形態を多少は受けいれるもののあくまで限定的なものに過
ぎず、電力消費量は現在とさほど変わらない。
将来 C:人々は従来の消費形態(第三の消費社会)をとり、電力消費量は増加する。


                    - 17 -
③ クルマ社会への取り組みは進むのか?


定義:クルマへの依存度という視点からエネルギー消費の削減可能性を考察する。
<Model>




 現状:日本では戦後の経済成長期にクルマを所有していることが一種の生活のステータ
ス・シンボルとなり、人々はクルマに憧れを抱き積極的に購入した。そして現在モビリテ
ィとしてクルマはそれまでの必欲品から生活の必需品として人々の間に浸透している。
 しかし、クルマはいくつかの問題を孕んでいる。エネルギー面では、石油の価格高騰な
ど化石燃料に対する様々な懸念が指摘されている中、クルマの動力源の燃料製造に消費さ
れる石油量は日本の全石油消費量の約50%を占めている。また、環境面では排気ガスの排
出による大気汚染などが挙げられる。燃費の向上や排気ガス削減のために日々、研究開発
が行われているが、現状としてはこれらの問題を解決することはできていない。
 そこで、最近ではモビリティとしてのクルマを見直す動きがある。一つは公共交通機関
の見直し。二つ目は交通規制で京都では交通渋滞や環境への影響を緩和する為に、都心部
などの交通に課金する仕組みであるロードプライシング導入に関する審議が始まろうとし
ている。三つ目は若者のクルマ離れで、クルマの保有台数は年々減少している。これに対
しては自動車業界が若者に積極的に自動車利用の呼び掛けを行い、また、補助金や税金免
除などの施策を通じてこの動きに抵抗している。今後、公共交通機関の見直しや交通規制
によって人々のクルマへの依存度は低くなり、(主に石油)エネルギーの消費量は削減さ
れるのだろうか


将来A:人々は公共交通機関を最大限に利用し、交通規制も進んだ脱クルマ社会となりエネ
ルギー消費量は削減される。
将来B:公共交通機関の利用率も交通規制も大きな進展がなく、エネルギー消費量は現状と
変わらない。
将来C:公共交通機関は見直されず、交通規制が緩和されたさらなるクルマ依存社会となり
エネルギー消費量はさらに拡大する。




                      - 18 -
④地域住民・市民はエネルギーを地産地消するのか


定義:ここでの地産地消は自給エネルギーと流通エネルギーとする。
                              (表 1 参照)
<Model>




 現状:3.11 後によく耳にするようになった「エネルギーの地産地消」という言葉だが、
このエネルギーは三つに分類できる(表 1)。エネルギーの地産地消は中でも流通エネルギ
ー(企業主導)
      ・自給エネルギー(市民主導)に分類される。流通エネルギーは電力会社か
ら供給されるエネルギーが主である。流通エネルギーの地産地消の取り組みとして、企業・
家庭における自家発電の導入が挙げられる(図 1)
                       。以前、問題とされていた発電コストの
高さは、技術革新によって大幅に改善されており、太陽光発電や風力発電などの再生可能
エネルギーの導入量は増加傾向にある(図 2)
                     。しかし、現状の問題点は一般家庭への導入
コストの高さにある。市民が独自に太陽光発電を導入する場合、1 世帯当たり平均 300 万円
もかかってしまうのである。この問題を解決すべく現在、約 100 万円程度に価格を抑える
ために技術開発を行っている。さらに再生可能エネルギーをさらに普及させるためのイン
フラ整備(スマートグリッド)も検討されている。
 一方、自給エネルギーの地産地消の取り組みとして、農家のバイオマス利用などが挙げ
られる。例えば、家畜の出した糞尿を発酵させてメタンガスを発生させて熱エネルギーを
発生させる燃料として利用したり、肥料として再利用したりしている。自給エネルギーの
地産地消の問題点は、それを利用するまでに金銭的・時間的コストがかかり、また利益の
回収に要する期間が長いことである。農家であれば収穫までにコストがかかり、肥料を作
ってもその結果、得られる作物の収穫にも長い期間を要する。しかし、最近では農業に興
味を持ち、自然志向(LOHAS 志向)の若者が増加していることもありアグリビジネスと言わ
れるビジネスが生まれている。また農水省がこの動きに合わせて農業の六次産業化を唱え
るなど自給エネルギーの地産地消を促進する動きがある。


                     - 19 -
将来 A:地域住民・市民はエネルギーを地産地消する。
将来 B:地域住民・市民はエネルギーを地産地消は行うが、流通エネルギーに偏り市民に地
産地消の意識は希薄。
将来 C:地域住民・市民はエネルギーを地産地消せず、依然として電力会社からの電力供給
に依存し続ける。




(表 1) 出所:地産地消のエネルギー(2011) NHK 出版 第 161 項




(図 1)出所:市民エネルギー研究所




(図 2)http://ishes.org/es/energy/2012/eng_id000466.html




                                    - 20 -
⑤再生可能エネルギーは普及するのか


定義:原子力発電の代替エネルギーとしての再生可能エネルギーの普及可能性を考察する。


<Model>




 現状:3.11 の原子力発電事故を受けて原子力発電の危険性が叫ばれ、その代替エネルギ
ーとして安全で持続可能な再生可能エネルギーが注目され始めている。具体的には太陽光
発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電などが挙げられる。再生可能エネルギーは CO
₂の排出量が少なく、また自然エネルギーを利用するため、燃料コストが低価格であるなど
のメリットがある。しかし、一方で多くの問題を抱えている。①従来の発電方式に比べて
発電コストが高い②導入に多額のコストがかかる③導入することができる立地が限られる
④電力供給における系統運用が困難となる、などが問題点として挙げられている。しかし
最近では再生可能エネルギー分野の技術が確立され始めていて、例えば、発電効率が向上
したことによって発電コストが以前よりも安価になり、再生可能エネルギー普及のために
系統運用の面でスマートグリッドの導入が検討されるなど徐々にそれらのデメリットが解
決されつつある。また自治体が主体となって導入を進めている地域も増加しており今後の
再生可能エネルギーの導入に拍車がかかりつつある。


将来 A:再生可能エネルギーは全国的に普及していく。
将来 B:再生可能エネルギーは地域限定的に普及していく。
将来 C:コスト面での制約が足かせとなり再生可能エネルギーの普及は見送られている。




                    - 21 -
⑥火力発電資源として 天然ガスは確保できるのか


定義:火力発電の燃料資源として、天然ガスの安定供給の可能性について考察する。


<Model>




 現状:天然ガスは他の化石燃料と比較して燃焼時の CO2 排出量が少ないという特徴もあ
り、発電の際の重要な資源として位置付けられている。3.11 後、原子力発電所が停止し、
再生可能エネルギーもすぐには普及しない中長期的な電源であることを考慮すると、資源
としての天然ガスの持つ意味は大きい。しかし、その 97%を輸入に頼っており、輸入コス
トの高さに問題を抱えている。
 日本は他国とは違い、国内に天然ガスパイプラインが張り巡らされていない。そのため
天然ガスを輸入相手国内で液化処理し、それをタンカーで運び、さらにそれを自国内で気
化処理する必要があるため、その設備費と輸送費に多額のコストがかかる。以前ロシアか
らの天然ガスパイプライン計画があったが、それを利用して得た安価な天然ガスを燃料に、
低価格で発電する競合他社の出現を恐れた電力会社の抵抗もあり、計画は白紙となった。
 コストの問題を天然ガスの価格指標という視点で見ると、日本は価格指標が全輸入原油
の CIF 平均価格とリンクしているために天然ガス価格が市場の需給バランスによって決ま
るアメリカと比較すると 2011 年度では 3.7 倍も高い。
 最近、アメリカで起きたシェールガス革命が注目されている。非在来型のガスであるシ
ェールガスが存在するのはアメリカだけではなく欧州、カナダ、中国などもその開発に積
極的に乗り出している。このように世界の国々が天然ガスの開発を行っている中、資源小
国と言われてきた日本では、、メタンハイトレードという新たな資源が注目を集めている。
これは水分子に天然ガスのメタン分子が取り込まれて氷状になっている物質で、そこから
取り出されるガスを資源として利用する。現在、日本では砂質層孔隙充填型メタンハイト
レードと言われる存在形態のものが、石油・天然ガス開発の生産手法を活用できるとして
開発が進められている。日本のメタンハイトレードの資源量は 2006 年度の日本の天然ガス
消費量の 87 年分と推定されているが今後、技術が発展することでさらに採掘可能な資源量
が増加する可能性もあり、日本が天然ガスを地産地消する日も夢ではないかもしれない。


将来 A:天然ガスは安定的に供給される
将来 B:天然ガスは輸入依存体質によって高額な値である一定量が供給される
将来 C:天然ガスの輸入差し止めとメタンハイトレード未開発で利用不可となる。


                        - 22 -
⑦発送電分離は進むのか


定義:発送配電分離による九電力会社の独占構造の崩壊の可能性を考察する。
<Model>




 現状:発送電分離とは、電力会社が独占的に保有している送電設備を電力会社から分離
して、広く一般に使用することを可能にしようとする試みである。この考えは、従来から
自然独占とされてきた電気事業において市場参入規制を緩和し、市場競争を導入すること
で電気事業者の経営効率化を促進しようとする電力自由化という試みの一つである。発送
電分離のメリットは大きく二つある。一つは独占構造の崩壊によって新規参入障壁が低く
なり、新規参入者と既存の電力会社間の競争が促進され、電気事業者の効率的な経営が促
進されること。二つ目は再生可能エネルギー普及のための分散型の電力供給網の構築を進
めることができることである。
 以前から発送電分離の議論はあったが、三つの理由から進められなかった。一つは電気
事業者の抵抗である。現在の日本の電気事業者は発送配電一貫体制というビジネスモデル
をとっている。それによって、電力供給における発電・送電・配電というスキームを、全
て自社で行うことで独占的に事業を運営している。そのため、電気事業者は既得権益が奪
われることを避ける。二つ目は発送配電一貫体制によって維持できたとされる高度な系統
運用に支障をきたす可能性があること。三つ目は発電・送電・配電の各設備への投資のバ
ランスが崩れ、各設備に必要な額の投資が行われない可能性があることである。
 発送電の分離の方法には会計分離・機能分離・法的分離・所有分離の四つがあり、日本
では会計分離(財務諸表を分離して作成)の立場を取っている。しかし、会計分離をして
いても、発送配電一貫体制は継続的に行われるので、さらなる分離が必要とされている。
3.11 後の現在、従来から独占体制を維持してきた電力会社に対する批判が高まったことで
電力自由化、特にこの発送電分離が議論されていて、送電系統運用部門を分社化する法的
分離が検討されるに至っている。


将来 A:発送電分離は進められる。
将来 B:発送電分離は検討段階で停滞している。
将来 C:発送電分離は断念され、従来の発送配電一貫体制が維持される。


                    - 23 -
⑧キャリア教育は整備されるのか


定義:即戦力が求められる現在の労働市場に対応する手段として小・中・高・大の一貫し
たキャリア教育を考察する。
<Model>




    現状:キャリア教育とは元来、アメリカの Career Education 運動が由来で「個人が人間
としての生き方の一部として職業や進路について学び、人生上の役割や選択と職業価値と
を結び付けることができるように計画された経験の全体4」と定義されている。
    この考えが日本に取り入れられた背景としては①日本的雇用の崩壊によって若者の自立
へのバトンを「企業」が「学校と家族」から受け取れなくなったこと(就職後の企業内教
育の縮減)②ニート・フリーターへの将来の社会的コスト増が見込まれることによる若年
雇用対策の必要性③「いい学校→いい会社→幸せな生活」という学歴信仰の崩壊、が挙げ
られる。また、大学三回生で、就職活動を始める時期に学生が自分なりの職業観などを有
していないことから就職活動に苦戦するなどの問題もあり、大学だけでなく小学校から一
貫してキャリア教育に取り組む必要性が指摘されている。しかし、それには問題点がいく
つか存在する。
    それは①政府からのトップダウンによる政策決定によって、キャリア教育の施策が、一
過性のイベント的な性格を帯びているため、その地域や学校の実情に合わせたキャリア教
育が行われていないこと。②若年雇用政策として全ての若者を対象にしているのではなく、
一部の若者の労働市場における「非正規→正規、求職者→非正規・正規」への移行を促す、
ある種のピックアップ型の支援策となっていること。③キャリア教育を行うための教員の
育成不足、などが挙げられる。最近では、学校が自主的に民間団体(NPO や企業)と協力し
てキャリア教育を行うなど、政策としての理論的なキャリア教育だけではなく、より現実
に即したキャリア教育がなされている。また、それによって学校の評価向上にもつながっ
た事例もあることからキャリア教育に力を入れる学校は増える傾向にある。


将来 A:小・中・高・大の一貫した、充実したキャリア教育が行われる。
将来 B:小・中・高・大でキャリア教育は行われるが、各教育段階を通して一貫したものと
なっていないため効果は限定的なものとなる。
将来 C:従来通りの学力向上に焦点を絞った教育がなされる。

4   権利としてのキャリア教育   東京明石書店(2007)

                          - 24 -
⑨市民は行政の担い手となりうるのか


定義:市民、特に NPO や市民団体と行政の協働をメインに考察する。
<Model>




 現状:現在の日本は三つの限界に直面している。一つ目は行政の限界である。これは地
方分権改革の進展と社会の成熟化によって求められる行政サービスが多様化し、従来のサ
ービス提供では不十分となったこと。また経済的には税収の減少など、行政の保有資源の
減少により、他のセクターによる補完が必要となったことが挙げられる。二つ目は市場の
限界である。市場はその競争メカニズムによって消費者に効率的にサービスを提供するこ
とができるが、それにも限界がある。三つ目は地域の限界である。従来、市民は市場と行
政が供給できないサービスを手に入れるために、地域共同体(ムラ)や血縁(イエ)が機
能してきた。しかし、今では都市化や核家族化、無縁社会化が進み、それらのサービスを
地域では供給できなくなっているのである。以上の三つの限界に直面した今、現状では供
給不可となったサービスを提供するための手段として、NPO や市民団体と行政の協働(役割
分担・相互補完・協力連携関係)が注目されている。
 協働の種類としては三つある。一つ目は教育や街づくりなど多様な分野で活動する NPO
へ施設を提供したり、金銭的に支援・後援したりするものである。二つ目は行政の役割の
補完で、自治体からの業務委託が主な内容である。三つは事業の共同実施である。例えば
啓発教育型のイベントの共同開催などがあげられる。今後はジョイント・ベンチャー的に
共同事業を設立することも考えられる。協働の具体的な例としては東京都三鷹市大沢地区
の取り組みが挙げられる。三鷹市は市民自身が議論し、提案する「市民プラン 21 会議」を
経て、最終的に提案した「まちづくりプラン」を地域住民と自治体が協働しながら実現し
ていく取組を行い、その過程で日本初の住民管理のコミュニティセンターを建設した。
 しかし、協働には問題点がいくつか存在する。①根本的に NPO や市民団体と自治体の目
的・能力の違い。②協働であるがゆえに責任の所在が不明瞭であること。③運営マネジメ
ントの問題がある。行政側の視点からは①NPO を業務の下請けとして使用する傾向があるこ
と。②協働を進めていく上での基準や手続上のルールが無いことが挙げられる。さらに NPO


                    - 25 -
側の視点からは①専門知識の欠如。②継続的な事業運営のための資金不足(法人格を持た
ない NPO の資金源は寄付や支援などの援助金のみであることに起因する)
                                   。これらの問題を
解決するために①協働の専門家として「協働コーディネーター」を養成する活動。②横浜
市で協働の手続き上のルールの作成。③WS 形式など、理論的な方法論に基づいた(図 1)
住民参加の促進などの活動が行われている。


将来 A NPO や市民団体との協働がうまく機能し、市民は行政の担い手となる。
将来 B NPO や市民団体との協働は行われるが、一過性のもので終わる。
将来 C NPO や市民団体との協働は行われるが、資金面などで自治体が優位な立場をとって
おり、NPO や市民団体はもはや自治体の出先機関となり、市民の行政介入の余地はない。




理論の一例




(図 1)住民参加のはしご   http://shiseiwyamato.blog85.fc2.com/blog-entry-34.html




                            - 26 -
⑩ベーシックインカムは導入されるのか


定義:市民の所得保障としてベーシックインカムの可能性を考察する。
<Model>




 現状:ベーシックインカムとは定期的に全ての男性・女性・子供に対して、市民権に基
づく個人の権利として、すなわち職業上の地位、職歴、求職の意思、婚姻上の地位とは無
関係に、無条件で政治共同体から支払われる所得のことである。ベーシックインカムの議
論の高まりは 1980 年代以降、雇用の不安定化・家族形態の変化などの影響によって従来の
福祉国家が行ってきた社会政策が通用しなくなってきたことが背景にある。
 ベーシックインカムの魅力は 4 つある。①家事労働など賃金労働に従事していない人々
にも所得を与えることができ、個人の自立を促すことができる。②労働市場の二重構造に
よる、不安定な労働賃金依存からの人々の解放と普遍的なセーフティネットの提供。③資
力調査に伴う人々のスティグマを無くし、失業・貧困の罠からの回避できること。④社会
保険料の削減の 4 つである。ベーシックインカムには完全なベーシック(FBI)、他の社会
保障給付などによって補足される必要のある部分的なベーシックインカム(PBI)、導入に
至るまでの過渡的ベーシックインカム(TBI)の三つがある。しかし、ベーシックインカム
には二つの問題点がある。第一に最低限の生活が可能な所得が定期的に取得できることに
より労働インセンティブが低下すること、またそれによって働かない人々が現れてフリー
ライダーが増加することである。第二に全国民に給付するための財源を確保することが困
難であることである。これらのことがベーシックインカム構想とその進展を阻害している。


将来 A:FBI が導入される
将来 B:PBI が導入される
将来 C:TBI の状態に終わる。




                       社会的ジレンマの諸定理 武藤正義 より


                     - 27 -
⑪公的年金制度は整備されるのか


定義:公的年金制度のなか厚生年金に焦点をあてて考察する。
<Model>




 現状:一般的に言われる公的年金は大きく国民(基礎)年金と厚生年金に分けられる。
国民(基礎)年金は強制加入の年金で、厚生年金は企業に属している者(正規社員)に加
入資格がある年金である。定年を迎えた労働者はこの二つの年金を受給することで、老後
の生活を保障されている。
 これらの年金制度は日本型雇用システムを前提に整備されているが、最近ではこのシス
テムが崩れて正規・非正規の二重構造が問題視されている。これが年金に及ぼす影響とし
ては厚生年金を受給できない人が増加し、彼らが生活に十分な年金を受給することができ
なくなる。そのため、非正規労働者の厚生年金保険適用問題が議論されている。
 しかし、非正規労働者に厚生年金を適用するにはいくつかのハードルがある。それは事
業者が保険料負担の増加を嫌うこと、被雇用者の手取り収入が減ることである。実務上の
問題としては、国民年金と厚生年金の保険料を、所得が低い非正規労働者から確実に徴収
することができるのか。また、新たに適用を拡大する対象者の範囲をどのように決めるの
かといった問題である。正規・非正規の二重構造や賃金制度を是正しようという動きがあ
るが、今後も非正規労働者の増加が見込まれる中、彼らは高齢者になった時に果たして生
活するに足る年金を受給することはできるのであろうか。


将来 A:公的年金制度は整備され、厚生年金は非正規労働者にも適用される。
将来 B:公的年金制度は整備されるが、非正規労働者への厚生年金の適用範囲は限られてい
る。
将来 C:公的年金制度は整備されず、非正規労働者への厚生年金は適用されない。




                   - 28 -
⑫生活保護に依存する人々は増加するのか


定義:生活保護は年金・保険などで受給漏れした人の最後のセーフティネットとして扱う。
    ここでは主に雇用保険(給付)に重点を置いて考察する。
<Model>




 現状:少子高齢化の影響もあり、生活保護者に占める高齢者世帯の割合が年々増加して
いる。これは少子高齢化の影響だけでなく、年金受給可能な年数まで年金額を納付しなか
った(できなかった)人々・厚生年金未加入の人々(非正規社員)が低年金者・無年金者
となり、生活保護に頼る人々が増加したことも大きな原因である。
 そのような中、最近、特に目につくのは「その他世帯」の受給率の増加である。これは
①リーマンショックによる失業者の増加②ホームレスなどへの生活保護受給要件の緩和③
不正受給の増加が主な原因となっている。つまり、現在の生活保護では「稼働能力のある
者」の保護率の上昇が一つの問題となっている。そこで、失業者の所得保障と再就職の支
援を目的とした雇用保険および失業給付の現状を見てみる。すると、失業給付を受けてい
ない失業者が 77%にも達していて(2009 年 ILO 報告書「金融経済危機―ディーセントワー
クという対応」より)雇用保険及び失業給付が機能していないことが分かる。その原因と
しては非正規社員の増加が挙げられる。非正規社員は雇用保険の加入要件が制限されてい
て、また有期雇用であるために加入期間が短いなど、受給要件を満たせない被雇用者が多
いのである。
 以前は、正規社員と非正規社員の間には給付要件に差があったが、バブル崩壊後に急増
した非正規労働者に対応してその給付要件はある程度緩和された。しかし、非正規社員は
低賃金なため保険料を払うことに困難を覚えている。また正規社員では、賃金日額の下限
がパートタイム労働者の水準まで引き下げられ、最低所得保障水準が最低生計費以下にな
るなどの問題も出てきている。


将来 A:雇用保険は整備され、受給者は増加し、給付水準も高くなり、失業者の再就職まで
の所得保障が確保される。
将来 B:雇用保険は整備され、受給者は増加するがその分、給付水準は低下し、失業者は生
活保護に頼る人が増加する。
将来 C:雇用保険は整備されず、失業者は再就職までの間、生活保護に頼ることになる。


                      - 29 -
⑬就労支援事業は活発化するのか


定義:地域就労支援事業の活発化による就労困難者の自立の可能性を考察する。
<Model>




 現状:ここ数年の経済環境の変化に伴う人件費削減と大規模なリストラクチャリング、
終身雇用制度の崩壊などが影響して、日本において完全失業率が増加傾向にある。このよ
うな動きの中で自治体が主体となって生活保護受給者や若者、母子家庭の母親など様々な
不利を抱えた就労可能な人々(就労困難者)をトータルに支援して、彼らの就労と自立を
図る就労支援事業の施策が注目されている。
 その先駆者としては大阪府が挙げられる。大阪府では和泉市と茨木市のモデル事業を踏
まえて、2002 年に大阪市をはじめとする府内 18 市町で本格的に就労支援事業を開始して、
2004 年には大阪府内 44 市町村へと広がった。その成果として、相談者全員の就職率は年々
上昇し、2002 年度の 18.0%から 2006 年には 24.4%になった。また就職先での雇用形態は正
規雇用が 40%台で推移し、2006 年には 64.9%にまで伸びているので一定の成果を上げてい
ることが分かる。しかし、2006 年度の成果の詳細を見てみると就職率は 37.7%と高い水準
であるが、非正規雇用の割合が大きいため就職しても生活に十分な所得を得ているかは定
かではない。現在の地域就労支援事業はこのように就職したとしてもその相談者が十分に
生活できているかまでは把握することができていないし(就職後のフォローアップ不足)、
厚労省の生活保護受給者等就労支援事業の担当部署間の連携が不足している、また事業の
成果は地域によってバラつきがあることも地域就労支援事業の課題となっている。


将来 A:地域就労支援事業は活発化して就業者は増加する
将来 B:地域就労支援事業は活発化するも地域間格差が生まれてしまい、都市と地方で二極
化してしまう。
将来 C:地域就労支援事業は一過性のものとなり不発に終わる。




                        - 30 -
⑭労働組合は機能するのか?


定義:労働者が自発的に労働環境を変える可能性を考察する。
<Model>




 現状:現在の日本では、企業ごとの常勤の従業員だけを組合員として組織する、企業別
労働組合が主流となっている。企業別労働組合は労使が協調しやすく、経営をスムーズに
行えるというメリットがある反面、労働組合が企業に内包されるため、経営者側が強い権
限を持つというデメリットもある。そのため日本の企業別労働組合は労働環境の改善より
も企業存続が第一義となり、労働環境の改善要求を行いにくい状態にある。
 この問題を解決するため、欧州等のように産業別・職業別労働組合への移行が主張され
ている。しかし、経営者側と労働組合側の間で癒着関係(既得権益)があるため、それら
の主張を受け入れようとしない。本来ならば、ナショナルセンター(全国の労働組合の連
合組織)が自ら、あるいは政治家を通じて労働者にとって不利な政策に対して意見すべき
なのだが、政府が企業経営をバックアップする傾向にあるためその力は弱体化しているの
が現状である。その他の原因としては①ナショナルセンターが多くの大企業の御用組合(経
営側と癒着している労働組合のこと)から組織されていること②労働組合員の実数の低下
などにより団体票の確保などが困難になり政治家への影響力が弱くなっていることがあげ
られる。
 現状を打破するためには労働者が自発的に労働組合へ参加し影響力を行使する必要があ
る。実際、多くの労働者は労働組合の必要性を感じているが、行動に移せていない。その
原因として①長時間労働による時間的余裕のなさ②経営者側からにらまれる、職場の人間
関係が悪化する、将来に対する不安などの意識的な問題が挙げられる。そのような中、NGO
が、非正規労働者の労働環境の改善のために法案の改正を要求するなどして活動している。


未来A:労働団体の活動が活発化し、雇用主への影響力は強い。
未来B:一部のみ活動が活発化するが、全体の規模は大きくない。
未来C:労働団体の活動は沈静化し、雇用主への影響力は弱い。


                   - 31 -
⑮労働時間は短縮されるのか


定義:労働時間の短縮によって、個人がその力と時間を国家に向ける可能性を考察する。
<Model>




 現状:日本の年間労働時間は時系列的に見ると実は減少傾向にある。これは 1987 年の新
前川レポートにて提言された時短政策と 1990 年代を通じた週休二日制の普及による法定労
働時間の引き下げ(週 48 時間→40 時間)の二つの要因が影響している。しかし週休二日制
の導入によって、土曜日の分の労働時間が平日の労働時間に配分され、平日の労働時間が
増加し、それに伴って睡眠時間は減少した。このように平日の労働時間の増加と睡眠不足
によって労働者(フルタイム労働者)に疲労感が蓄積された結果、過労死が起こるなど、
長時間労働の問題が顕在化している。
 そもそも長時間労働が起こる要因は自発的要因と非自発的要因に分けることができる。
自発的要因は①仕事中毒、②金銭インセンティブ(残業による割増賃金)
                                、③出世願望(長
時間労働による評価、昇進機会の高まり)などがある。一方、非自発的要因としては①市
場の失敗(未発達の外部労働市場と多額の転職コスト)
                        、②職能資格制度による職務の不明
確さとそれに伴う負の外部効果(仕事が早く終わっても上司の仕事に付き合わなければな
らないなど)、③雇用調整のためのバッファー確保(平時に長時間労働を課すことで雇用調
整時に人員ではなく労働時間の削減の「削りしろ」で調整)が挙げられる。自発的要因に
関しては労働者本人の意思である部分が大きいため政府は介入することが困難である。し
かし、非自発的要因には外部からの介入の余地がある。そこで海外に目を向けると、アメ
リカでは職能資格制度ではなく職務給を採用することによって職務範囲を明確化しており、
フランスでは 1982 年以降、労働時間規制について労働法の柔軟化・分権化の動きが進めら
れている。またドイツでは労働時間貯蓄制度を導入して所定外労働時間の蓄積を休暇に使
うことができるなど、政府の介入により長時間労働規制へ対応している。日本でも外部労
働市場の整備などの動きがあるが、元来の日本的雇用システムの名残が阻害要因となって
長時間労働規制が遅れている。


将来 A:長時間労働は規制され、労働時間は短縮される。
将来 B:長時間労働の規制は未整備で労働時間は現状と変わらない。
将来 C:長時間労働は規制されず、労働時間はさらに増加する。




                     - 32 -
⑯正規・非正規社員間の所得格差は是正されるのか


定義:賃金制度から正規・非正規社員間の所得格差是正の余地を考察する。
<Model>




 現状:日本企業の賃金制度として従来は、企業の継続的な成長が前提条件となる終身雇
用・年功賃金制が採用されていた。しかし、高度経済成長の終焉とバブル経済の崩壊によ
ってその前提条件は崩れた。そこで、新しく成果主義が導入された。しかし、成果主義は
評価基準の曖昧さ、従業員の職場環境による成果への影響の差などの問題があった。この
ころバブル経済の崩壊によるリストラなどで多くの人々が職を追われ、また人件費圧縮の
ために企業は新卒採用も圧縮し始め、転職・非正規社員が生まれた。1985 年の労働派遣法
制定以降、非正規社員は増加しつづけ、今では日本の全従業員の約3割を占めている。こ
れらの出来事によってそれまで一律だった賃金に差が生じ、正規・非正規社員の間での所
得格差が起きている。
 この事態に対して、欧米で一般的な職務給へと移行させようとする動きがある。その証
拠に 2009 年度のマニフェストで民主党は「同一労働同一賃金」を掲げている。職務給とは
職務の価値を決定し、その価値を金銭表示したものを賃金として、その職務に従事する労
働者に支払うというものである。その職務価値は職務分析・職務評価の手法を用いて決定
される。実は非正規社員の賃金制度はこの職務給が採用されており、時間単位給と呼ばれ
ている。従来の年功給は崩壊しつつあり、また職務給が適用される非正規社員が増加した
ことを背景に年功給の職務給への移行による所得格差是正の動きが始まったのである。
 しかし、職務給はその職務の価値を公正かつ正確に決定する明確な基準がなく、職務給
に移行すると正社員の給与水準が低下する可能性がある。また企業の人件費も増加する可
能性もあり、職務給への移行には様々な課題が残されている。しかし、民間企業で非正規
社員の割合が高いスーパーなどの小売店では人材の能力開発という視点から職務給を取り
入れている企業もある。具体的には職務を複数の課業に分けて、それらに難易度をつけ、
その難易度に応じた賃金が与えられるというものになっている。


将来 A:職務給へと移行し、所得格差は是正される。
将来 B:小売店など非正規社員の雇用割合が高い企業では職務給へと移行するようになり、
所得格差は職種間でばらつきがある。
将来 C:依然として年功給を適用しており所得格差は是正されない。


                    - 33 -
⑰地方税制度は整備されるのか


定義:地方税を分権化された自治体財政の重要な財源として位置付けて考察する。
<Model>




 現状:自治体が行政サービスを提供する際の財源は、地方税・地方交付税・国庫金・地
方債の四つに分けられる。なかでも地方税は自治体歳入の約 40%を占める重要な財源であ
る。近年、自治体財政強化の一環として地方税の制度改革が議論されている。具体的には
①地方消費税の引き上げ及び自主財源化②法定外普通税・目的税の導入などがある。
 ①は税収の安定性の面から提唱されている。現在の自治体の歳入は地方法人二課税(法
人事業税と法人住民税)が約二割を占めている。しかし、これらはその地域の法人企業数
によって税収に差が生じるため、歳入としては不安定で地域間格差を生みやすい。そのた
め自治体は企業誘致を積極的に行って税収を確保しようとする。すると、企業が流出し、
その地域は雇用や税収を失う。そして、税率の引下げ競争が始まり、全ての地域において
税収確保が困難となる可能性がある((自己破滅的)租税競争の問題)。このことから課税
対象が消費者で、安定的に税収を確保できる地方消費税に注目されているのである。
 ②に関して自治体は独自の課税項目を設定した(新税ブーム)。東京都であればホテル税
がある。しかし、実際の課税対象は地域住民ではなく、外部から訪れる観光客や企業とな
っているため、これらは「受益と負担の関係」が不明瞭となることから住民のモニタリン
グ機能が発揮されないという問題がある(租税輸出の問題)
                          。他にも固定資産税の拡充など
の策が挙げられるが、現状としてはあまり進歩していない。それは関係当事者の利害関係
による。①の地方消費税を例にとると、まず一般会計を担う財務省は社会保障財源として
重要な消費税収入を自治体に奪われることを嫌う。一方、地方の立場からすれば、地域間
格差及び財源確保には国の税金である消費税を当てた方が、地域間で税収入を再分配する
よりも揉めずに済む。そのため現在では一般会計を担う財務省の関与を排除すべく、地方
共有税の導入を提唱している。


将来 A:地方税制度は整備され、自治体財政は強化される。
将来 B:自治体は依然として公的資金である交付税に依存した財政運営を続ける。
将来 C:地方税制度は整備されず、自治体財政はさらに弱体化する。


                   - 34 -
⑱政策決定における地方の権限は拡大するのか


定義:地方政府が行政サービスを決定する裁量権の拡大の可能性を考察する。


<Model>




 現状:市町村レベルで見ると、中央政府は①都市計画決定②開発許可③建築確認等に関
与し、都道府県レベルで見ると、中央政府は①都市計画②義務教育の教職員数や保育施設
の人員配置の必置規制③県教育委員会の文部大臣承認など、多くの地方行政に関与し、規
制をしているため、その地域の実情に即した効率的な行財政が行われていない。
 地方分権の議論において頻繁に目にする権限移譲の議論だが、実際は地方、特に市町村
段階では消極的姿勢が強い。それは権限の移譲に伴って増加する自治体の職務と、それに
必要な人件費の増加が原因である。そのため地方政府は権限の委譲に対して行動を起こせ
ない、起こさないのが現状である。
 しかし大阪府の岸和田市では建築確認の権限についてすぐれた街並み、都市景観、都市
環境を守り、作っていくためには人件費などの経費増加はやむを得ないとして積極的に立
ち上がっている。このように経費がかかっても適切な行政サービスを提供するために積極
的に立ち上がる自治体も現れている。今後、地方ではその地域の実情に即した効率的な行
財政を行うために積極的に立ち上がり、権限を拡大し、裁量を握っていくのだろうか。


将来 A:地方政府は権限を勝ち取っていく。
将来 B:地方政府が声を上げるも中央政府は権限を地方には譲らない。
将来 C:中央政府はさらに地方行政への関与を進めていく。




                    - 35 -
⑲地方債市場は整備されるのか


定義:地方債市場は地方自治体の自主的な資金調達先として位置付けて考察する。
<Model>




           市場と向き合う地方債 東京 : 有斐閣(2011)をもとに筆者作成


 現状:日本の地方債は現在、世界でも高い割合の債務残高を抱えており問題視されてい
る。(図 1)このように債務残高が累増する契機はバブル経済崩壊時にさかのぼる。バブル
経済崩壊後に景気対策として公共事業における地方単独事業が急増した。そして政府はこ
れを金銭的に支援するために地方債の発行条件を緩和し、さらには償還金の9割を国庫負
担するなどして債券発行を促し、公共事業を進めたのである。その後も政府は地方自治体
の地方債発行に対して交付税措置(償還金の一部を国庫負担)や地方財政再建制度を講じ
ることで彼らを擁護しているため、地方自治体の地方債発行の意識が麻痺してしまい、年々
債務残高が累増しているのである。
 そこで地方債発行にバイアスをかけて、健全な債権発行による資金調達を促すべく、地
方債市場の自由化という議論が進められている。例えば、①市場からの資金調達の促進②
起債制限の強化③交付税措置の廃止④格付け機関の厳正な格付けなどがある。実際の取り
組みとして①に関しては 2001 年に財政投融資改革が実施され、公的資金による負担が軽減
されたことで地方自治体は自主的に民間資金による調達(市場公募債)が求められ、その
割合は増加している。そこで地方債市場にさらに市場性を持たせるために④の格付け機関
が適切に財政状態をチェックして格付けすることで、地方間に差を付け健全な財政運営の
競争を促している。しかし、財政力に乏しい地方に関しては債権の信用力が低いので、依
然として公的資金に依存している自治体も少なくない。そのため資金調達方法においても
地方格差が生まれているのが現状である。②は自治体が債権を発行する際の発行条件を規
制するもので、実質公債費比率(収入に占める実質的な公債費の割合)という指標を用い


                    - 36 -
て段階的に起債制限を行い、債権発行にブレーキをかけている。③は現行の交付税措置を
自治体の債券発行の規律、責任感を阻害する要因として廃止しようとする試みである。し
かし一挙に交付税措置を廃止してしまうと、自治体特に都心部以外の自治体の債権発行に
大きな影響を及ぼし、資金調達機能不全に陥る可能性もあるため、あまり前進していない。
 このように地方債市場の自由化に向けて様々な取り組みが行われているが、
                                  (完全)自由
化に反対するものもいる。それは市場原理に任せるだけでは地域間格差が広がり、内政に
目を向けると地方による信用格差などによって、国民統合が崩れ経済活動に齟齬が生じる
可能性があるからである。そのため自由化によって市場に任せるだけでなく起債制限と財
政力に乏しい地方への優先的な交付税配分など、政府の最低限度の介入と上手くバランス
をとった自由化が求められている。




将来 A:地方債市場は整備され、各自治体は自らの政策責任のもと自主的に資金を調達する。
将来 B:地方債市場は整備されるが、資金調達における地方間格差が広がり、行財政運営に
    も格差をもたらす。
将来 C:地方債市場は整備されず、地方自治体の債務残高は増加し続け資金調達先としての
   地方債市場は崩壊する。




                              (図 1)出所:総務省 HP




                    - 37 -
3-4 CIM の集計と SG の作成


 影響要素の抽出と詳細な分析を行った後、それらがどの程度、互いに影響を及ぼし、影
響を及ぼされるのか(能動値と受動値)を数値化していく。これを CIM(クロスインパクト
マトリックス)と呼ぶ。下記は CIM で数値化したデータを散布図にしたものである。これ
を SG(システムグリッド)と呼ぶ。


                               SG
                                  160




                                  140                                ⑨



                                  120                          ⑱
                                                 ⑰         ④


                                  100                ⑤     ⑫
                              ⑬                      ①
                                                 ⑲
                                                     ⑪
      能                          ⑦           ②             ⑩
                              ③ 80
      動0    20   40   60                80           100       120       140   160
                       ⑧
      値                           ⑮
                                   ⑯
                                   60
                          ⑥
                      ⑭


                                   40




                                   20




                                   0
                              受動値
                                                                                     36


3-5 軸の選定と FFM の作成


 SG を作成した後、世界を描く上での基軸となる二つの影響要素を抽出する。今回は④の
「地域住民・市民はエネルギーを地産地消するのか」と⑨の「市民は行政の担い手となり
うるのか」の二つを軸として抽出した。選定基準は二つある。一つ目は電力の需給構造と
市民と国家の関係という二つの視点から一つずつ選定することである。これはどちらか一
方の視点に偏った考察を避けるためである。
 二つ目は未来に幅を持たせることである。これは軸の選定において最も重要なことであ
る。なぜなら軸の選定の段階で描かれる世界の幅が狭ければ、最終的に描かれる世界にダ
イナミズムが喪失してしまうからである。
 以上の二点の選定基準に従って④と⑨を世界の基軸と選定した。④と⑨は電力需給と市
民と国家の関係の双方の視点において、能動値と受動値が最も高い。そのため描く世界に
最も幅が出ると考えられるからである。




                                        - 38 -
世界を描く上での基軸を選定した後、それを二軸に FFM(フォー・フィールド・マトリッ
クス)と呼ばれる、四つの世界を表すディメンジョンを作成する。下記の図はそのディメ
ンジョンを表している。




           フォー・フィールド・マトリックス
                エネルギーの地産地消




           A                    B
 国家圧力型行政                            市民介入型行政




           現状                   C
                電気事業者からの供給依存            37


  四つのディメンジョンのうちの一つは現状だと考えられるので、本稿では考察の対象
から除外した。


 ついに世界にたどり着いた。さあ冒険の始まりだ。




                       - 39 -
第四章 各世界の考察 -待ち受ける三つの世界の冒険―


 FFM を作成した後、スパイダーチャートを作成する。スパイダーチャートは FFM で描かれ
た世界 ABC のそれぞれの特徴を元に、影響要素の分析で立てた未来の三つの仮説を各ディ
メンジョンに適合させる。それをレーダー図にプロットしていくことで、世界の構図を図
式化する。以下はスパイダーチャートとその世界に至る時系列である。


4-1 世界 A 「原発なき日本に未来なし」とその道のり
                          世界A 「原発なき日本に未来なし」
                  地方債市場は整備されるのか                ① スマートグリッドは構築されるのか
                                  ⑲        A
                                               3



                                                       ② 共有型の消費形態は浸透するのか
      行政サービスにおける
      地方の権限は拡大するのか        ⑱                                       ③ 脱クルマ社会への取り組みは進むのか

                                           B   2




 地方税制度は整備されるのか
                  ⑰                                                   ④    地域住民・市民はエネルギーを
                                                                           地産地消するのか


                                           C   1




  同一価値同一労働は
              ⑯                                                               ⑤
                                                                                  再生可能エネルギーは
  実現するのか
                                                                                  普及するのか

                                               0




             ⑮                                                                ⑥
 労働時間は短縮されるのか                                                                  火力発電の燃料資源として
                                                                               天然ガスは安定的に
                                                                               確保することができるのか

                 ⑭                                                        ⑦
                                                                              発送電分離は進むのか
   労働組合は機能するのか


                      ⑬                                             ⑧キャリア教育は整備されるのか
    就労支援事業は活発化するのか

                              ⑫                            ⑨ 市民は行政の担い手となりうるのか
        生活保護に依存する人々は増加するのか
                                       ⑪            ⑩ベーシックインカムは導入されるのか                             38
                               公的年金制度は整備されるのか




                                                                                      ①
   世界A       「原発なき日本に未来なし」の軌跡                                                  ⑲      3
                                                                                               ②
                                                                           ⑱                        ③
                                                                                      2



                                                                       ⑰                                ④
   世界Aの特徴                                                             ⑯
                                                                                      1


                                                                                                            ⑤
   ・原発依存社会                                                            ⑮
                                                                                      0



                                                                                                            ⑥
   ・超中央集権的な政治色
                                                                      ⑭                                     ⑦
   ・国家破綻はもはや確定要素                                                          ⑬                             ⑧
                                                                              ⑫                ⑨
 2012年                                                                            ⑪        ⑩                2030年
                          スマートグリッド構築と                スマートグリッド構築
  企業の地産地消は増加
                          自家発電・節電が促進される              自家発電普及
  市民の需要は変化なし                                                                                                国家
                                                     電力需要はひとまず抑制
                                      発送電分離
                                                     電力会社間の競争は起こるが
  火力発電と大飯原発で              新興国のエネルギー需要により             原発を保有する九電力会社の寡占状態
  電力を賄っているうちに             火力発電の燃料確保が困難に
  再エネ普及に着手                                                                                企業                          個人
                                      原発がフル稼働           電気料金低下
                          一時的な電気料金の急騰                       企業は労組と連携して
    エネルギー分野へ
                          企業のコスト意識は高まり                      被雇用者に対して以前にも増して
    莫大な投資
                          非正社員を積極採用・リストラも行う                 強い影響力を行使する
                          また給与削減にも踏み切る                                                              国家・企業
                                                            沈静化                                     市民団体・労働組合の
      失業者・生活保護者の
                                                                                                    恐怖のブラックボックス
      救済のために投資            電気料金高騰・リストラに             電力供給の逼迫に
                                                                                                    の形成
                          市民活動が活発化                 行政が市民団体に協働を持ちかけて
  日銀への物価上昇要請で                                      連携(市民団体の御用団体化)
  10兆円の債務増                    債務残高急増

                                               地方は起債制限の限界に達して起債不可能に。
                                               また都市と地方で財政格差が大きくなる。
             負のスパイラル                           そのため財源は中央から配分され
                                               国家は中央集権的な政治体制を強めていく。
                                               配分される財源は増税と国債発行によって賄う。
 経済・社会保障政策        給与削減        デフレの進行                                                                             41
 のために債券発行




                                                   - 40 -
世界Aの特徴は大きく分けて三つある。一つ目は電力供給を原子力発電に大きく依存
していることである。再生可能エネルギーは普及し、地産地消も地域によって普及が進ん
でいるが、それは火力発電の燃料資源である天然ガスの供給が困難となったことで、別の
電源が必要になったからである。つまりは自主的な地産地消ではなく、強いられた地産地
消なのである。そして火力発電に頼ることができなくなった政府と電力会社は再生可能エ
ネルギーと原子力発電に依存する供給体制をとった。しかし、実際は再生可能エネルギー
で賄うことができる電力量は限られているので、電力供給の大半を原子力に依存する供給
構造をとることになった。
 二つ目は超中央集権的な政治色が色濃い点である。再生可能エネルギーの普及・スマー
トグリッドといったインフラ整備に政府は莫大な投資を行ってきた。その甲斐あって電力
インフラは整備されたが、地方政府は多大な債務を抱え込むこととなった。結果として、
地方政府は起債制限の上限に達して債権を発行することが不可能になった。そのため財源
を中央政府に頼る他ならず、地方政府はその行政権を財政面から制限され、ますます中央
政府の出先機関として機能することとなったのである。
 三つ目は国家破綻が確定していることである。政府は再生可能エネルギーの普及・スマ
ートグリッドといった電力インフラへ投資を行った。しかし、それだけでなく、電気料金
の高騰によって実施されたリストラ・給与削減によって増加した生活保護者への社会保障
関係費が膨れ上がり、政府は莫大な債権を発行したのである。結果として政府の累積債務
は現在の数倍にまで達して国家破綻は免れない状態にある。


 冒険は始まったばかりだ。次は世界Bへの冒険である。




                   - 41 -
山崎翔平 2012年度ゼミ論文. ”原発”という問題解決手段を捨てた日本社会は構築されるのかpdf   コピー
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