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にゅう

ぼ

さつ

ぎょう

ろん

入 菩 薩 行 論
菩 薩 の 生 き 方 へ の 手 引
(Bodhisattvacharyavatara : A Guide to the Bodhisattva's Way of Life)
寂天菩薩 (Acharya Shantideva) 著 土山仁士 現代超訳
【解説】

1.遍禮佛佛子 及諸應敬者 依教今略說 佛子律儀行
仏陀と仏陀の子、並びに諸々の尊敬すべき人々に敬意を表し、教えに従って今か
ら簡単に、仏陀の子の律義な生き方について説明しましょう。
【仏陀の子とは、仏陀と同じ悟りを目指す菩薩を意味する。著者シャンティデーヴァ
は17人のナーランダー・マスターの一人(8世紀)であるが、菩薩の生き方の実践法
を本書に取り纏めた】

2.昔無論未說 詩韻吾不善 豈敢言利他 撰此為修心
以前から説明されているものばかりで、私には韻を踏む技能もありませんので、他
を利するためというよりは、心について学ぶために本書を書いています。
【著者は謙遜しているが、複雑な言い回しが多々見られる。本書の執筆を通して、
多くの読者が価値ある教えを享受できたことは明白だが、著者としても多くを学べ
有意義であったと想われる】

3.循此修善故 信亦暫增長 善緣等我者 見此容獲益
本書に従うと善いことを学べますので、信仰心がしばらくの間強化され、善い因縁
が自分を待ち受け、本書を目にすると利益を得られます。
【著者は本書の意義を確信している】

第一品 菩提心利益

(第一章 菩提心の福徳)

4.暇滿極難得 既得能成利 倘若利未辦 後世豈復得
余暇と基金を得るのは大変困難です。時間とお金は人間にとって意義深いことを達
成するチャンスを与えてくれますので、もし私が今この時間とお金を利用しないなら、
このような絶好の機会は二度と訪れないでしょう。

Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
【著者シャンティデーヴァにスポンサーがついたものと想われる。時間とお金に余裕
ができたからこそ、この大作が生まれたのであろう。逆説的にとらえれば、肉体の
生存を維持するためのお金の方が精神的満足よりも優先事項であるとも読める】

5.猶於烏雲夜 剎那耀閃電 如是因佛力 世萌修福意
一瞬すべてを明るく照らす、曇りの夜の暗闇に光る稲光のように、仏陀の健全な思
想はこの世界でめったに現れるようなものではありません。
【仏陀の悟りがどれだけ強烈且つ稀なものであるかを表現している。無神論である
にも拘わらず、精緻な論理により2,600年もの間この地球でメジャーな宗教の一つに
位置付けられていることからもその偉大さは明白であろう】

6.故善恆微弱 惡大極難堪 捨此菩提心 餘善豈能勝
従って、善はいつも微弱であり、悪の巨大な力が極めて強烈です。完全な菩提心以
外のどのような善もこの悪に打ち勝つことはできないでしょう。
【菩提心とは、「他人に幸福をもたらすために悟りを開きたいという願い」のことであ
る。自分のための望みでは弱すぎて巨悪には打ち勝てないのであろう。他人のため
という尊い望みのパワーがどれだけ莫大なものであるか想像できる】

7.多劫佛深思 見此最饒益 眾生依於此 順利獲勝樂
永劫の間熟考してきた仏陀は菩提心を有益と見ています。なぜなら、菩提心によっ
て無限の大衆が素早く至福の状態を得ることができるからです。
【菩提心が幸福につながると判断されている理由は、温かい心・思いやり・優しさ等
の利他心によって、驕り・傲慢・強欲・執着等の利己心を予防でき、利己心が原因
の恐れ・怒り・憎しみ・嫉妬・悲しみ等の破壊的感情を減少できて穏やかな心を維持
できることより、動機・行動・結果の全てが善くなるからである。しかも、心が変容す
れば一瞬の内にその効果が現れる】

8.欲滅三有苦 及除眾不安 欲享福樂者 恆莫捨覺心
自分が背負っている条件から生じる多くの苦しみをなくしたい人、生きとし生けるも
のに多くの喜びをもたらしたい人、そして自分も大きな幸福感を味わいたい人は決
して菩提心を捨てるべきではありません。
【自分が背負っている条件とは、因果の法則によって過去の否定的な行動の責任を、
否定的な結果という形で今後受けなければならないことを意味する。従って、過去
の悪行を今後の善行で帳消しにできるのである。自他共に幸せに導く菩提心の偉
大さは莫大であるという趣旨】

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9.生死獄中囚 若生菩提心 即刻名佛子 人天應禮敬
輪廻転生という牢獄の囚人は、もし菩提心が生じれば、その瞬間に仏陀の子と名付
けられ、人間界と天上界から尊敬されるべきです。
【「輪廻転生という牢獄の囚人」とは、私たち人間を含むこの世の全ての生きとし生
けるもののことであり、囚人だから、牢獄であるこの世に何度も生まれ変わる必要
があるのである。しかし、菩提心が生じた瞬間に、もはや牢獄の囚人ではなくなり、
輪廻転生という牢獄から解放される】

10.如勝冶金料 得此垢身成 無價佛陀身 故應持覺心
菩提心は錬金万能薬に勝るものであり、私たちの汚れた体を計り知れない程貴重
な仏陀の体に変えてくれます。ですから、この悟りの心をつかむべきです。
【私たちの汚れた体とは、否定的な心から否定的な言葉や行動が身体から生じたこ
とを意味する。一方、仏陀の体とは肯定的な心から肯定的な言葉や行動が身体か
ら生じることを意味する。汚れた体を浄化する万能薬が菩提心なのである】

11.導師以慧觀 見彼極珍貴 欲出三界者 宜善持覺心
菩薩は智慧によって菩提心の極めて珍しい貴重さを見抜いており、この世の滞在か
ら解放されたい者は、しっかりとこの悟りの心をつかむべきです。
【この世への輪廻転生に終止符を打つには、悟りを開くことにより無知を智慧に切り
替え、この世での修業の必要性をなくさねばならないという仏教哲学に基づく】

12.餘善如芭蕉 生果即枯槁 覺心樹生果 不枯反增茂
菩提心以外の徳は、実を結んだ後枯れてしまうバナナの木のようです。一方、悟り
の心は多年生の木と同じで、絶えず実を結んだ後も枯れることなく繁茂します。
【音楽、絵画、スポーツなどの一時的な感覚的満足とは異なり、菩提心は長持ちす
る精神的満足をもたらす。精神的満足とは感情的満足とも異なり、意識レベルでの
穏やかな安らぎを意味する】

13.如人雖犯罪 依士得除畏 若有令脫者 畏者何不依
非常に恐れている時は勇者に身を委ねるように、この菩提心に自分自身を委ねるこ
とにより私は速やかに苦しみから解放されるでしょう。たとえ、非常に耐え難い悪事
を犯した場合であっても、私の良心はこの菩提心に身を捧げるでしょう。
【恐れや良心の呵責が生じた時は、意識が内向きになっている時であり、自分のこ
とばかり意識するから緊張し苦しむのである。このような時は意識を外向きにし、他
人のことを意識することで余裕が生まれるが、この効果を引き出す手段として菩提

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心は有効である。また、笑顔の効果も絶大である】

14.覺心如劫火 剎那毀諸罪 彌勒喻善財 覺心德無量
ちょうど一時代の終わりの火災のように、悟りの心は瞬時に全ての巨大悪を消滅さ
せます。賢明な弥勒菩薩は弟子に悟りの心の計り知れない利点を教えました。
【心が変わると動機が変わり、動機が変わると行動が変わり、行動が変わると習慣
が変わり、習慣が変わると人格が変わり、人格が変わると運命が変わると言われる
ように、悪から善への心の変容は瞬時に人生と世界を変えるパワーを有する】

15.略攝菩提心 當知有二種 願求菩提心 趣行菩提心
簡単に言うと、菩提心には二種類あることを理解すべきです。一つは悟りたいという
願いであり、もう一つは思い切って悟りを実践することです。
【まずは思うことが必要だが、実践しなければ何も変わらない。そして、実践を強固
なものにするには、自分への誓約が効果的である】

16.如人盡了知 欲行正行別 如是智者知 二心次第別
熱望することと実際に行うこととは別であることを、人は良く理解していますが、同様
に賢者は二者間の違いを順に理解していきます。
【思うだけで行動した気になる人もいるが、思考と実践は全く別物であることを念押
ししている。換言すると、祈るだけでは効果は期待できず、実践してはじめて結果が
出るということである。】

17.願心於生死 雖生廣大果 猶不如行心 相續增福德
転生人生に於いて悟りを熱望する心は、広く大きな報いをもたらすとはいえ、悟りの
実践のように途切れないで増え続ける福徳をもたらすわけではありません。
【悟りたいと願うことによる効果は継続的なものではなく一時的なものであり、悟った
ことを日々の生活の中で実践することにこそ継続的効果があると指摘している。例
えば、マザー・テレサは祈りよりも実践の人であったので、継続的な福徳を受けてい
たと想われる】

18.何時為度盡 無邊眾有情 立志不退轉 受持此行心
果てしない数の心を有する生きものの生涯を、経験し尽くすまで、不退転の決意を
固め、この悟りの心を実践する人には、(19へ続く)
【果てしない数の心を有する生きものの生涯を経験し尽くすとは、悟りを開くことで新
たな生涯を経験する必要が無くなり、この世への輪廻転生が不要になることを意味
する。不退転の決意は、自分に対する誓約に基づくものであろう】

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19.即自彼時起 縱眠或放逸 福德相續生 量多等虛空
(18から続く)ただちにその時点から、たとえ睡眠中や勝手気ままに振る舞う時でも、
福徳が継続して生じ、その量は虚空(何も妨げるものがなく全てのものの存在する
空間)と同じ位多いでしょう。
【仏教では、意識は覚醒中だけでなく、夢を見ている時も深い睡眠中も四六時中活
動していると考える。悟りを開くとは、意識のレベルが最高レベルになることを意味
するので、意識が心と体を監視し悪行を制御することにより功徳を積み続けるので、
24時間福徳を得られるのだろう】

20.為信小乘者 妙臂問經中 如來自說故 其益極應理
小乗(自分の悟りを第一とする教え)を信仰する者を、素晴らしい片腕と見なして経
典の中に問い、如来自身が説明しますので、その利益はこの上なく、その言動に注
意を払うべきです。
【小乗とは、個人の解脱を目的とする教義を指し、一人しか乗せられない小さな乗り
物に例えている。衆生の救済を目的とする教義の大乗と対比的に用いる】

21.若僅思療癒 有情諸頭疾 具此饒益心 獲福無窮盡
もし、ただ単に心を有する生きものから頭痛を治療したいという思いが、この利他心を
具えるならば、幸福を得て困窮することはなく、(22へ続く)
【他に幸福をもたらしたいと望む利他心があれば、幸福になれると言い切っている】

22.況欲除有情 無量不安樂 乃至欲成就 有情無量德
(21から続く)まして、はかりしれないほどの心身の苦痛や生活の苦労を、心を有す
る生きものから取り除く欲望、更には心を有する生きものがはかりしれないほどの
徳を達成する欲望については言うまでもなく自明のことです。
【利他心にもレベルがあり、他の比較的軽い苦しみを取り除く欲望、他の重い苦しみ
を取り除く欲望、強力な功徳を他に積ませてあげる欲望へとレベルが上がっていく】

23.是父抑或母 誰具此心耶 是仙或欲天 梵天有此耶
ほんとに父もしくは母でさえこのような利他心を持っているでしょうか?仙人もしくは
六欲天(欲界の中にある6種の天)はどうでしょうか?梵天(後期ヒンズー教の最高
神)でさえこのような利他心を持っているでしょうか?
【他人に幸福をもたらしたいと望む利他心を持つことは、並大抵のことではないと主
張している】

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24.彼等為自利 尚且未夢及 況為他有情 生此饒益心
彼らは自分の利益のために、まだ夢を達成していないのですから、まして他の心を
有する生きもののために、利他心を生じることなどあろうはずがありません。
【自分の利益が最優先であり、他人の利益は二の次だというのが一般的であると主
張している。】

25.他人為自利 尚且未能發 生此珍貴心 稀有誠空前
他人は自らの利益のためにすら、まだ利他心を生じさせることができないのですか
ら、この珍しく貴重な心を生じさせることは、めったにない、誠実で空前のことです。
【菩提心を生じさせることがどれほど貴重なことかを示している。自らの利益のため
の利他心とは、他を利することが自らを利することになることを知った上で、他を利
することを意味する】

26.珍貴菩提心 眾生安樂因 除苦妙甘霖 其福何能量
珍しく貴重な菩提心は生きとし生けるものの安楽の原因であり、苦しみを取り除く素
晴らしい恵みの雨であり、その幸福をどのようにはかることができるでしょうか?
【菩提心は苦しみを取り除くばかりか安楽までもたらし、計り知れない幸福の源であ
るという趣旨】

27.僅思利眾生 福勝供諸佛 何況勤精進 利樂諸有情
ただ単に生きとし生けるものを利することを考えることが、諸々の仏に供えることより
幸福度において勝るならば、まして勤勉な修行が諸々の心を有するものの幸福に
利するはずがありません。
【ただ利他心を頭で考えるより、実際に修行で実践することの方がより一層の幸福
をもたらすことを逆説的に示している】

28.眾生欲除苦 奈何苦更增 愚人雖求樂 毀樂如滅仇
人々は苦しみを取り除きたいのに、どうしてか苦しみが一層増し、愚かな人は幸福
を望んでいるにも拘らず、仇敵を滅ぼすかのように幸福を毀損します。
【苦しみを取り除きたい人が苦しみを増加させ、幸せを望む人が折角手に入れた幸
せを自ら破壊してしまうのには、本人が気付いていない理由があります】

29.於諸乏樂者 多苦諸眾生 足以眾安樂 斷彼一切苦
あらゆることに於いて幸福が不足している人や、多くの苦しんでいる人々は、人々を
安楽で満たすことによって、自分の全ての苦しみを断ち切ります。

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【思いもよらぬことだろうが、自分の苦しみを取り除いて幸せになりたいなら、他人を
幸せにすることだと言い切っている】

30.更復盡其癡 寧有等此善 安得似此友 豈有如此福
更に、その智慧不足を全て回復しますが、これと同等の善がどこにあるでしょうか?
この友人に勝るものはどこで得られるでしょうか?この幸福に匹敵するものはどうし
てあり得るでしょうか?
【他人に幸せをもたらすことが、どれほど尊いことかを強調している】

31.若人酬恩施 尚且應稱讚 何況未受託 菩薩自樂為
もし、人が恩返しをするなら、なおさら称賛すべきですが、まして頼まれもしないのに、
他人に幸せをもたらすことを自らの楽しみとみなす菩薩については何も言及する必
要はありません。
【菩薩の利他心がどれほど素晴らしいものかを示している】

32.偶備微劣食 嗟施少眾生 令得半日飽 人敬為善士
偶然、備えていたわずかな粗食を、少数の人々に無礼に施し、半日分の満腹感を
得させる者を、人は善い立派な人物とみなして尊敬します。
【人々がこの程度の人間を尊敬することを不思議がっている】

33.何況恆施與 無邊有情眾 善逝無上樂 滿彼一切願
まして、無限の心を有する生きものにいつも施しを与え、悟りの彼岸に去った者はこ
の上なく楽しみ、それらの全ての願いを満たします。
【利他行を実践している人こそ、最も尊敬に値するという趣旨】

34.博施諸佛子 若人生惡心 佛言彼墮獄 久如心數劫
多くを施す菩薩である仏陀の子に、もし邪悪な心を生じるなら、そのような人は地獄
に堕ち、未来永劫地獄に留まるだろうと仏陀は言いました。
【利他行を実践する最も敬うべき菩薩に悪意を抱くことは、最悪の悪行を積むことに
なるので、重い罰を受けなければならないのであろう】

35.若人生淨信 得果較前增 佛子雖逢難 善增罪不生
もし、人に汚れのない信仰が生じたなら、以前と比べて福徳は増し、仏陀の子は困
難に遭遇している時であっても、善行が増え罪は生じません。
【汚れのない信仰とは菩提心のことを指し、福徳が増える効果といかなる時も悪行
はなくなり善行のみを積んで更に福徳が増す効果がある】

Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
36.何人生此心 我禮彼人身 誰令怨敵樂 歸敬彼樂源
どんな人にこの菩提心が生じようとも、私はその人の体を敬い、その誰もが非難す
べき敵さえも喜ばせて、敬意を込めてその喜びの根源に帰ります。
【菩提心が生じた人は、相手の態度に依存せずに、常に利他行を実践できるように
なるので、敵に対しても思いやりを広げて穏やかな心を維持するという趣旨】

2013年3月24日 土山仁士

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入菩薩行論 第一章 菩提心の福徳(現代超訳)

  • 1. にゅう ぼ さつ ぎょう ろん 入 菩 薩 行 論 菩 薩 の 生 き 方 へ の 手 引 (Bodhisattvacharyavatara : A Guide to the Bodhisattva's Way of Life) 寂天菩薩 (Acharya Shantideva) 著 土山仁士 現代超訳 【解説】 1.遍禮佛佛子 及諸應敬者 依教今略說 佛子律儀行 仏陀と仏陀の子、並びに諸々の尊敬すべき人々に敬意を表し、教えに従って今か ら簡単に、仏陀の子の律義な生き方について説明しましょう。 【仏陀の子とは、仏陀と同じ悟りを目指す菩薩を意味する。著者シャンティデーヴァ は17人のナーランダー・マスターの一人(8世紀)であるが、菩薩の生き方の実践法 を本書に取り纏めた】 2.昔無論未說 詩韻吾不善 豈敢言利他 撰此為修心 以前から説明されているものばかりで、私には韻を踏む技能もありませんので、他 を利するためというよりは、心について学ぶために本書を書いています。 【著者は謙遜しているが、複雑な言い回しが多々見られる。本書の執筆を通して、 多くの読者が価値ある教えを享受できたことは明白だが、著者としても多くを学べ 有意義であったと想われる】 3.循此修善故 信亦暫增長 善緣等我者 見此容獲益 本書に従うと善いことを学べますので、信仰心がしばらくの間強化され、善い因縁 が自分を待ち受け、本書を目にすると利益を得られます。 【著者は本書の意義を確信している】 第一品 菩提心利益 (第一章 菩提心の福徳) 4.暇滿極難得 既得能成利 倘若利未辦 後世豈復得 余暇と基金を得るのは大変困難です。時間とお金は人間にとって意義深いことを達 成するチャンスを与えてくれますので、もし私が今この時間とお金を利用しないなら、 このような絶好の機会は二度と訪れないでしょう。 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 2. 【著者シャンティデーヴァにスポンサーがついたものと想われる。時間とお金に余裕 ができたからこそ、この大作が生まれたのであろう。逆説的にとらえれば、肉体の 生存を維持するためのお金の方が精神的満足よりも優先事項であるとも読める】 5.猶於烏雲夜 剎那耀閃電 如是因佛力 世萌修福意 一瞬すべてを明るく照らす、曇りの夜の暗闇に光る稲光のように、仏陀の健全な思 想はこの世界でめったに現れるようなものではありません。 【仏陀の悟りがどれだけ強烈且つ稀なものであるかを表現している。無神論である にも拘わらず、精緻な論理により2,600年もの間この地球でメジャーな宗教の一つに 位置付けられていることからもその偉大さは明白であろう】 6.故善恆微弱 惡大極難堪 捨此菩提心 餘善豈能勝 従って、善はいつも微弱であり、悪の巨大な力が極めて強烈です。完全な菩提心以 外のどのような善もこの悪に打ち勝つことはできないでしょう。 【菩提心とは、「他人に幸福をもたらすために悟りを開きたいという願い」のことであ る。自分のための望みでは弱すぎて巨悪には打ち勝てないのであろう。他人のため という尊い望みのパワーがどれだけ莫大なものであるか想像できる】 7.多劫佛深思 見此最饒益 眾生依於此 順利獲勝樂 永劫の間熟考してきた仏陀は菩提心を有益と見ています。なぜなら、菩提心によっ て無限の大衆が素早く至福の状態を得ることができるからです。 【菩提心が幸福につながると判断されている理由は、温かい心・思いやり・優しさ等 の利他心によって、驕り・傲慢・強欲・執着等の利己心を予防でき、利己心が原因 の恐れ・怒り・憎しみ・嫉妬・悲しみ等の破壊的感情を減少できて穏やかな心を維持 できることより、動機・行動・結果の全てが善くなるからである。しかも、心が変容す れば一瞬の内にその効果が現れる】 8.欲滅三有苦 及除眾不安 欲享福樂者 恆莫捨覺心 自分が背負っている条件から生じる多くの苦しみをなくしたい人、生きとし生けるも のに多くの喜びをもたらしたい人、そして自分も大きな幸福感を味わいたい人は決 して菩提心を捨てるべきではありません。 【自分が背負っている条件とは、因果の法則によって過去の否定的な行動の責任を、 否定的な結果という形で今後受けなければならないことを意味する。従って、過去 の悪行を今後の善行で帳消しにできるのである。自他共に幸せに導く菩提心の偉 大さは莫大であるという趣旨】 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 3. 9.生死獄中囚 若生菩提心 即刻名佛子 人天應禮敬 輪廻転生という牢獄の囚人は、もし菩提心が生じれば、その瞬間に仏陀の子と名付 けられ、人間界と天上界から尊敬されるべきです。 【「輪廻転生という牢獄の囚人」とは、私たち人間を含むこの世の全ての生きとし生 けるもののことであり、囚人だから、牢獄であるこの世に何度も生まれ変わる必要 があるのである。しかし、菩提心が生じた瞬間に、もはや牢獄の囚人ではなくなり、 輪廻転生という牢獄から解放される】 10.如勝冶金料 得此垢身成 無價佛陀身 故應持覺心 菩提心は錬金万能薬に勝るものであり、私たちの汚れた体を計り知れない程貴重 な仏陀の体に変えてくれます。ですから、この悟りの心をつかむべきです。 【私たちの汚れた体とは、否定的な心から否定的な言葉や行動が身体から生じたこ とを意味する。一方、仏陀の体とは肯定的な心から肯定的な言葉や行動が身体か ら生じることを意味する。汚れた体を浄化する万能薬が菩提心なのである】 11.導師以慧觀 見彼極珍貴 欲出三界者 宜善持覺心 菩薩は智慧によって菩提心の極めて珍しい貴重さを見抜いており、この世の滞在か ら解放されたい者は、しっかりとこの悟りの心をつかむべきです。 【この世への輪廻転生に終止符を打つには、悟りを開くことにより無知を智慧に切り 替え、この世での修業の必要性をなくさねばならないという仏教哲学に基づく】 12.餘善如芭蕉 生果即枯槁 覺心樹生果 不枯反增茂 菩提心以外の徳は、実を結んだ後枯れてしまうバナナの木のようです。一方、悟り の心は多年生の木と同じで、絶えず実を結んだ後も枯れることなく繁茂します。 【音楽、絵画、スポーツなどの一時的な感覚的満足とは異なり、菩提心は長持ちす る精神的満足をもたらす。精神的満足とは感情的満足とも異なり、意識レベルでの 穏やかな安らぎを意味する】 13.如人雖犯罪 依士得除畏 若有令脫者 畏者何不依 非常に恐れている時は勇者に身を委ねるように、この菩提心に自分自身を委ねるこ とにより私は速やかに苦しみから解放されるでしょう。たとえ、非常に耐え難い悪事 を犯した場合であっても、私の良心はこの菩提心に身を捧げるでしょう。 【恐れや良心の呵責が生じた時は、意識が内向きになっている時であり、自分のこ とばかり意識するから緊張し苦しむのである。このような時は意識を外向きにし、他 人のことを意識することで余裕が生まれるが、この効果を引き出す手段として菩提 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 4. 心は有効である。また、笑顔の効果も絶大である】 14.覺心如劫火 剎那毀諸罪 彌勒喻善財 覺心德無量 ちょうど一時代の終わりの火災のように、悟りの心は瞬時に全ての巨大悪を消滅さ せます。賢明な弥勒菩薩は弟子に悟りの心の計り知れない利点を教えました。 【心が変わると動機が変わり、動機が変わると行動が変わり、行動が変わると習慣 が変わり、習慣が変わると人格が変わり、人格が変わると運命が変わると言われる ように、悪から善への心の変容は瞬時に人生と世界を変えるパワーを有する】 15.略攝菩提心 當知有二種 願求菩提心 趣行菩提心 簡単に言うと、菩提心には二種類あることを理解すべきです。一つは悟りたいという 願いであり、もう一つは思い切って悟りを実践することです。 【まずは思うことが必要だが、実践しなければ何も変わらない。そして、実践を強固 なものにするには、自分への誓約が効果的である】 16.如人盡了知 欲行正行別 如是智者知 二心次第別 熱望することと実際に行うこととは別であることを、人は良く理解していますが、同様 に賢者は二者間の違いを順に理解していきます。 【思うだけで行動した気になる人もいるが、思考と実践は全く別物であることを念押 ししている。換言すると、祈るだけでは効果は期待できず、実践してはじめて結果が 出るということである。】 17.願心於生死 雖生廣大果 猶不如行心 相續增福德 転生人生に於いて悟りを熱望する心は、広く大きな報いをもたらすとはいえ、悟りの 実践のように途切れないで増え続ける福徳をもたらすわけではありません。 【悟りたいと願うことによる効果は継続的なものではなく一時的なものであり、悟った ことを日々の生活の中で実践することにこそ継続的効果があると指摘している。例 えば、マザー・テレサは祈りよりも実践の人であったので、継続的な福徳を受けてい たと想われる】 18.何時為度盡 無邊眾有情 立志不退轉 受持此行心 果てしない数の心を有する生きものの生涯を、経験し尽くすまで、不退転の決意を 固め、この悟りの心を実践する人には、(19へ続く) 【果てしない数の心を有する生きものの生涯を経験し尽くすとは、悟りを開くことで新 たな生涯を経験する必要が無くなり、この世への輪廻転生が不要になることを意味 する。不退転の決意は、自分に対する誓約に基づくものであろう】 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 5. 19.即自彼時起 縱眠或放逸 福德相續生 量多等虛空 (18から続く)ただちにその時点から、たとえ睡眠中や勝手気ままに振る舞う時でも、 福徳が継続して生じ、その量は虚空(何も妨げるものがなく全てのものの存在する 空間)と同じ位多いでしょう。 【仏教では、意識は覚醒中だけでなく、夢を見ている時も深い睡眠中も四六時中活 動していると考える。悟りを開くとは、意識のレベルが最高レベルになることを意味 するので、意識が心と体を監視し悪行を制御することにより功徳を積み続けるので、 24時間福徳を得られるのだろう】 20.為信小乘者 妙臂問經中 如來自說故 其益極應理 小乗(自分の悟りを第一とする教え)を信仰する者を、素晴らしい片腕と見なして経 典の中に問い、如来自身が説明しますので、その利益はこの上なく、その言動に注 意を払うべきです。 【小乗とは、個人の解脱を目的とする教義を指し、一人しか乗せられない小さな乗り 物に例えている。衆生の救済を目的とする教義の大乗と対比的に用いる】 21.若僅思療癒 有情諸頭疾 具此饒益心 獲福無窮盡 もし、ただ単に心を有する生きものから頭痛を治療したいという思いが、この利他心を 具えるならば、幸福を得て困窮することはなく、(22へ続く) 【他に幸福をもたらしたいと望む利他心があれば、幸福になれると言い切っている】 22.況欲除有情 無量不安樂 乃至欲成就 有情無量德 (21から続く)まして、はかりしれないほどの心身の苦痛や生活の苦労を、心を有す る生きものから取り除く欲望、更には心を有する生きものがはかりしれないほどの 徳を達成する欲望については言うまでもなく自明のことです。 【利他心にもレベルがあり、他の比較的軽い苦しみを取り除く欲望、他の重い苦しみ を取り除く欲望、強力な功徳を他に積ませてあげる欲望へとレベルが上がっていく】 23.是父抑或母 誰具此心耶 是仙或欲天 梵天有此耶 ほんとに父もしくは母でさえこのような利他心を持っているでしょうか?仙人もしくは 六欲天(欲界の中にある6種の天)はどうでしょうか?梵天(後期ヒンズー教の最高 神)でさえこのような利他心を持っているでしょうか? 【他人に幸福をもたらしたいと望む利他心を持つことは、並大抵のことではないと主 張している】 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 6. 24.彼等為自利 尚且未夢及 況為他有情 生此饒益心 彼らは自分の利益のために、まだ夢を達成していないのですから、まして他の心を 有する生きもののために、利他心を生じることなどあろうはずがありません。 【自分の利益が最優先であり、他人の利益は二の次だというのが一般的であると主 張している。】 25.他人為自利 尚且未能發 生此珍貴心 稀有誠空前 他人は自らの利益のためにすら、まだ利他心を生じさせることができないのですか ら、この珍しく貴重な心を生じさせることは、めったにない、誠実で空前のことです。 【菩提心を生じさせることがどれほど貴重なことかを示している。自らの利益のため の利他心とは、他を利することが自らを利することになることを知った上で、他を利 することを意味する】 26.珍貴菩提心 眾生安樂因 除苦妙甘霖 其福何能量 珍しく貴重な菩提心は生きとし生けるものの安楽の原因であり、苦しみを取り除く素 晴らしい恵みの雨であり、その幸福をどのようにはかることができるでしょうか? 【菩提心は苦しみを取り除くばかりか安楽までもたらし、計り知れない幸福の源であ るという趣旨】 27.僅思利眾生 福勝供諸佛 何況勤精進 利樂諸有情 ただ単に生きとし生けるものを利することを考えることが、諸々の仏に供えることより 幸福度において勝るならば、まして勤勉な修行が諸々の心を有するものの幸福に 利するはずがありません。 【ただ利他心を頭で考えるより、実際に修行で実践することの方がより一層の幸福 をもたらすことを逆説的に示している】 28.眾生欲除苦 奈何苦更增 愚人雖求樂 毀樂如滅仇 人々は苦しみを取り除きたいのに、どうしてか苦しみが一層増し、愚かな人は幸福 を望んでいるにも拘らず、仇敵を滅ぼすかのように幸福を毀損します。 【苦しみを取り除きたい人が苦しみを増加させ、幸せを望む人が折角手に入れた幸 せを自ら破壊してしまうのには、本人が気付いていない理由があります】 29.於諸乏樂者 多苦諸眾生 足以眾安樂 斷彼一切苦 あらゆることに於いて幸福が不足している人や、多くの苦しんでいる人々は、人々を 安楽で満たすことによって、自分の全ての苦しみを断ち切ります。 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 7. 【思いもよらぬことだろうが、自分の苦しみを取り除いて幸せになりたいなら、他人を 幸せにすることだと言い切っている】 30.更復盡其癡 寧有等此善 安得似此友 豈有如此福 更に、その智慧不足を全て回復しますが、これと同等の善がどこにあるでしょうか? この友人に勝るものはどこで得られるでしょうか?この幸福に匹敵するものはどうし てあり得るでしょうか? 【他人に幸せをもたらすことが、どれほど尊いことかを強調している】 31.若人酬恩施 尚且應稱讚 何況未受託 菩薩自樂為 もし、人が恩返しをするなら、なおさら称賛すべきですが、まして頼まれもしないのに、 他人に幸せをもたらすことを自らの楽しみとみなす菩薩については何も言及する必 要はありません。 【菩薩の利他心がどれほど素晴らしいものかを示している】 32.偶備微劣食 嗟施少眾生 令得半日飽 人敬為善士 偶然、備えていたわずかな粗食を、少数の人々に無礼に施し、半日分の満腹感を 得させる者を、人は善い立派な人物とみなして尊敬します。 【人々がこの程度の人間を尊敬することを不思議がっている】 33.何況恆施與 無邊有情眾 善逝無上樂 滿彼一切願 まして、無限の心を有する生きものにいつも施しを与え、悟りの彼岸に去った者はこ の上なく楽しみ、それらの全ての願いを満たします。 【利他行を実践している人こそ、最も尊敬に値するという趣旨】 34.博施諸佛子 若人生惡心 佛言彼墮獄 久如心數劫 多くを施す菩薩である仏陀の子に、もし邪悪な心を生じるなら、そのような人は地獄 に堕ち、未来永劫地獄に留まるだろうと仏陀は言いました。 【利他行を実践する最も敬うべき菩薩に悪意を抱くことは、最悪の悪行を積むことに なるので、重い罰を受けなければならないのであろう】 35.若人生淨信 得果較前增 佛子雖逢難 善增罪不生 もし、人に汚れのない信仰が生じたなら、以前と比べて福徳は増し、仏陀の子は困 難に遭遇している時であっても、善行が増え罪は生じません。 【汚れのない信仰とは菩提心のことを指し、福徳が増える効果といかなる時も悪行 はなくなり善行のみを積んで更に福徳が増す効果がある】 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 8. 36.何人生此心 我禮彼人身 誰令怨敵樂 歸敬彼樂源 どんな人にこの菩提心が生じようとも、私はその人の体を敬い、その誰もが非難す べき敵さえも喜ばせて、敬意を込めてその喜びの根源に帰ります。 【菩提心が生じた人は、相手の態度に依存せずに、常に利他行を実践できるように なるので、敵に対しても思いやりを広げて穏やかな心を維持するという趣旨】 2013年3月24日 土山仁士 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.